コソヴォ北部で運河が爆破される:警察はセルビア人住民8名を逮捕
11月29日、コソヴォ北部のイバル・レペナツ運河で爆発事件が発生し、コソヴォの水供給と電力供給に大きな影響を及ぼした。コソヴォ警察は11月30日、この爆破事件に関連し複数の容疑者を逮捕したと発表した。
爆発は北部のセルビア人多数派自治体であるズビン・ポトク市で発生した。この爆発により、ウイマン/ガジボデ湖を通じた複数の都市への給水及びコソボ電力公社が保有する発電所の冷却システムが影響を受けた。コソヴォ政府は、12月1日時点での水供給と電力供給は安定していると発表した。
コソヴォ警察の発表によると、爆破には約15〜20キログラムの爆発物が使用されたと見られている。
コソヴォのクルティ(AlbinKurti)首相は30日に現場を視察し、これを「テロ行為」と非難したうえで、セルビアによる犯行だと主張したが、具体的な証拠は示さなかった。これに対しセルビアのブチッチ(ALeksandar Vučić)大統領は、「根拠のない非難」として、爆破へのセルビアの関与を全面的に否定した。
コソヴォ警察は爆破事件に関連してコソヴォ北部等で10カ所を捜索し、200着以上の軍服、ロケット弾発射装置6基、長銃、拳銃、弾薬等を押収したうえで、8名のセルビア人コソヴォ住民を逮捕したと発表した。逮捕された容疑者の多くは、コソボ政府がテロ組織に指定しているセルビア人住民組織「市民防衛隊」のメンバーだとされている。
この事件を受け、コソボ安全保障評議会は橋梁、変電所、アンテナ、湖、運河などの重要施設の警備強化を決定した。
米国やEUは爆発を強く非難し、犯人の早期特定と責任追及を求めている。在コソヴォ米国大使館は、「重要な民間インフラに対するこの攻撃を強く非難する。我々は状況を注視しており、この爆破に責任を負う者を法の裁きにかけるため米国はコソヴォ政府に対し必要な支援を提供する」との声明を発表した。またEU対外活動庁(EEAS)も、「重要インフラに対するこのテロ行為を最大限の強い言葉で非難する」との外交安保上級代表声明を発表した。
この爆発事件は、北部のズベチャン市の警察署及び市庁舎で発生した爆発に続き、最近では3件目の事件となり、コソヴォ北部における治安の悪化が懸念されている。
セルビア人が圧倒的多数派を占めるコソヴォ北部地域では、セルビア系金融機関や行政事務所の強制閉鎖、セルビア・ディナールの使用禁止措置等、セルビアの影響力を排除しようとするコソヴォ政府による強硬措置とそれに反発するセルビア人住民との間の対立が激化してきており、昨年9月には、北部ズベチャン近郊の村落でセルビア人武装勢力とコソヴォ治安当局の間で死傷者を伴う銃撃戦も発生している。
米国やEUは、コソヴォ政府による一方的措置を非難しつつ、セルビアに対しては、セルビアに逃亡した銃撃事件の容疑者を逮捕・訴追するよう強く求めている
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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