セルビア大統領が徴兵制の復活を表明

9月14日、ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、2025年半ばまでに徴兵制を復活させると表明した。

セルビア大統領府プレスリリースによれば、この発言は第177期軍士官学校生卒業式典の場で述べられたものであり、ヴチッチ大統領は「セルビアにとって強力な軍隊がどれほど必要であるか、そして、いかにより多くの武器を購入し製造する必要があるかを理解して欲しい」と述べ、セルビアは他国を攻撃する意図はないが、日々セルビアに対し脅威を与える者たちを抑止する必要があると強調した。しかし、具体的な脅威対象や潜在敵国については言及しなかった。

今年1月、ヴチッチ大統領は西バルカン地域およびヨーロッパにおける安全保障上の懸念が増していることから、徴兵制復活を検討していると示唆していた。過去一年間、コソヴォ北部情勢の悪化を受けて、セルビアはコソヴォとの境界線付近での戦闘準備態勢を度々強化するなど、セルビア・コソヴォ間の緊張関係が強まっている。

セルビアでは旧ユーゴスラヴィア時代から存在していた徴兵制(兵役義務)が2011年に廃止され、これ以降、セルビア軍は職業軍人のみで構成されてきた。徴兵制の復活は、職業軍人化の方針を大きく転換させるものとなる。

式典でのスピーチにおいてヴチッチ大統領は、「今日の世界では、価値や規範はもはや語られず、誰もが妥協の精神を持てずに自身の利益のみを追求している」と指摘し、そうした環境の中でセルビアの国益と平和を保護するためには、より強力な軍が必要であると述べた。

ヴチッチ大統領によれば、新たな徴兵制の下では、男性に対して75日間の兵役義務が課される予定であり、女性の参加は任意となる。この提案はヴチッチ大統領の政党が議会で多数を占めているため、政府と議会の承認を得る見込みである。ロシアによるウクライナ侵攻後、世界的な軍事的緊張が高まる中、他の欧州諸国も徴兵制復活を検討しており、クロアチアでは2025年から徴兵制を再導入する予定となっている

徴兵制の再導入に際しては、議会での関連法案採択が必要とされるが、ヴチッチ大統領が実質的な指導者を務めるセルビア進歩党(SNS)を中心とした与党勢力が議会の過半数を維持しており、この提案は間もなく可決されるものと予想されている。

セルビアは先月、フランス製戦闘機ラファール12機を調達する契約を結んでいる。

参考記事

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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