セルビア・コソボ首脳会談が開催される
8月18日、ブリュッセルにおいて、ベオグラード・プリシュティナ間対話の一環としてブチッチ(Aleksandar Vucic)セルビア大統領とクルティ(Albin Kurti)コソボ首相が会談を行った。会談は、仲介役であるEUのボレル(Josep Borrell)外務・安全保障政策上級代表を交え、午前に3者会談を行った後、セルビア及びコソボ側が各々EU側との2者会談を行い、最後に再び3者会談を実施した。
会談後に報道声明を発表したボレル上級代表は、今回の会談では新たな合意は成立しなかったと明らかにした。ボレル上級代表の声明は概要次のとおり。
本日、ブチッチ大統領とクルティ首相の間での3回目の首脳会談を行った。本日の会談は通常の会談ではなかった。私がライチャーク(Miroslav Lajcak)EU西バルカン担当特別代表と共にこの会談の実施を呼びかけたのは、コソボ北部における情勢悪化と緊張の高まりに直面したことが理由である。
この会談は、善意に基づきコソボ北部における平和と安定を維持するための解決策を見出すという、両指導者の責任に関する会談であったと言える。この会談は、西バルカンと欧州にとって致命的に重要な時期に行われた。ロシアによるウクライナへの侵攻以降、我々の大陸に戦争が再び戻ってきた。我々はこの大陸における劇的で危険な瞬間に直面しており、今は緊張を高めるのではなく、長きにわたる問題に解決策を見出すべき時である。
両指導者に対し述べたように、この会談は危機管理体制の下で行われた。これは通常の会談ではなく危機管理のための会談であり、その目的は現地の情勢を沈静化させることであった。一方で、我々はコソボとセルビアの関係正常化合意に向けた道筋についても議論した。
両指導者は関係正常化合意の詳細について議論した。現在生じている緊張は、未解決のセルビア・コソボ間関係に由来する境界線の問題の症状の一つである。即ち、根底にある問題が解決されない限り、今日生じた事態は明日には別の場所で生じ得るということである。
EUが仲介する対話以外にこの問題を解決する手段は存在しない、ということをブチッチ大統領及びクルティ首相は理解している。コソボとセルビアの関係が最終的にどのようになるべきかという点について、両者の立場に違いがあることは既によく知られている。しかし両指導者は、関係正常化プロセスを迅速に進めるために、今後も定期的に議論を行うことに同意した。私は、ライチャーク特別代表と共にこの問題を優先事項として扱っていく。
コソボ・セルビア間の越境に関するナンバープレートと書類に関する緊張は、EUにとって最も差し迫った問題である。国際社会は緊張が再度高まることは望んでおらず、現地における事態のエスカレーションが生じれば、両当事者がその責任を負うことになる。
残念ながら、本日は合意に至ることは出来なかったが、これで全てが終わるわけでは無い。両指導者は、このプロセスを継続する必要性について同意しており、今後数日以内(in the coming days)に議論は再開されるだろう。9月1日までにはまだ時間があり、私は諦めてはいない。今日は合意に至ることはなかったが、我々は諦めない。我々は議論を継続し、解決策を見つけ出す必要がある。
会談の最後に、私は両指導者に対し、EU加盟はコソボ及びセルビアにとって究極的な目標であり続けるべきであり、また両者は既にこの目標にコミットしていることを改めて明確に伝えた。そしてこの目標を実現するために、両者はこの(関係正常化)プロセスを進める必要があり、その第一歩は、現在生じている問題の解決策を見つけ出すことである。
長時間に及んだ本日の会談の最も重要な成果は、包括的かつ相互に受入可能な解決策を見つけ出すため、今後も共同で取り組むことに我々が合意したことである。現在の情勢は、現地に暮らす住民だけでは無く、欧州全体にとっての安全保障と安定を脅かしている。
残念ながら本日は解決策を見出すには至らなかったが、それに向けた取り組みを継続することが我々の責務である。
また、ブチッチ大統領は会談終了後、自身のInstagram公式アカウントを通じて次のように述べた。
本日の会談は全てのセルビア人とセルビア国家にとって困難なものだった。本日の会談が成功だったと言うことは出来ないが、これ以上のコメントは控えたい。自分は、今後数日以内に妥協に基づく解決策を見出すことは可能だと信じており、平和と安定のための闘いを続ける。
セルビアメディアの報道によれば、ブチッチ大統領は会談終了後もブリュッセルに留まっており、また21日には、ベオグラードにおいてセルビア系コソボ住民代表者等との会談が実施予定であるとされている。
一方、コソボ首相府は次の通り声明を発表した。
今回の首脳会談は本来は7月19日に開催される予定であり、クルティ首相はその際出席の意向を表明していたが、あったが、セルビア側の要請によって延期されていたものである。
本日の会談での議題は2つであった。第一に、関係正常化合意の枠組みについて議論した。クルティ首相は、関係正常化合意は、コソボとセルビア相互の国家承認を焦点とする法的拘束力を有するものであるべきだと強調した。クルティ首相は合意の枠組みに含まれるべきいくつかの要素を提示した。
第二の議題は現在生じている政治・安全保障上の問題であり、クルティ首相は、平和と安全及び全ての市民の平等を保証するうえで、コソボにおける合法性と合憲性を維持することがいかに重要であるかを指摘した。
クルティ首相は、今回の会談を主催し、仲介役となったボレルEU上級代表及びライチャークEU特別代表に対する謝意を表明した。
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