ディナール使用を禁止するコソヴォ中銀の決定に対し欧米が懸念を表明
1月17日にコソヴォ中銀が採択した、コソヴォ国内でのセルビア・ディナールの使用を事実上禁止する規則改正について、欧米主要国が相次いで懸念を表明している。
1月24日、コソヴォ中銀のイスマイリ(Ahmet Ismaili)総裁と会談したスンヨグ(Thomas Szunyog)駐コソヴォEU大使は、自身のX(旧Twitter)アカウントへの投稿の中で、改正規則が「セルビア人地域の居住者の日常生活に特に大きな影響を及ぼすと予想されており、この規則がどのように履行されるかについて質問し、この規則が施行されるまでの期間があまりに短く、対応するための時間が不十分であることへの懸念を表明した」と述べた。
一方、欧米主要5カ国(米国、英国、仏、独、伊、通称「クイント」)の駐コソヴォ大使は、1月26日にクルティ(Albin Kurti)コソヴォ首相と会談を行った後、28日に次のとおり共同声明を発表した。
仏、独、伊、英国、米国の各大使館は、現金取り扱いに関するコソボ中央銀行(KCB)の最近の規則が、偽造通貨を減らし、金融の安定性を守り、コソヴォにおける現金流通の透明性を高めることを目的としているにもかかわらず、特にセルビア人が多数を占めるコミュニティへの影響について懸念を与えていることに留意する。
出典:在コソヴォ米国大使館ウェブサイト(https://xk.usembassy.gov/st_cbk124/)
我々は、この規則が特に学校や病院に与える影響を懸念している。この規則は、セルビアから支払いや財政援助を受けている圧倒的多数のコソヴォ在住セルビア人の日常生活にも直接的な影響を及ぼすであろう。
金曜日にクルティ首相とこの問題について意見交換した結果、クイントは、十分な移行期間を確保するためにこの規則の施行を一時停止し、明確かつ効果的な広報を行うことを求める。この問題は、EUが仲介するセルビア・コソヴォ間対話の枠組みでさらに議論されるべきである。
こうした欧米諸国からの懸念表明に対し、コソヴォ政府側は、改正規則は新たな規制を設けるものではなく、既存のルールの適切な執行を確保するためのものだと主張している。コソヴォ金融当局のハイラ(Naim Hajra)査察官はメディアの質問に対し、「コソヴォでは以前よりユーロのみが通貨としての使用を認められてきたのであり、このルールは既にある程度は施行されていると言える」と述べた。
またビスリミ(Besnik Bislimi)コソヴォ副首相は自身のFacebookアカウントへの投稿で、「コソヴォ中銀はディナールの使用を禁止する必要は無い。なぜなら、そもそもコソヴォにおいてディナール使用が認められたことは過去に一度も無いのだから」と述べている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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