
セルビア大統領「米国の対NIS制裁は10月1日に発効する」
9月25日、セルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、米国によるセルビア石油産業(Naftna Industrija Srbije, NIS)に対する制裁が、6度の延期を経て10月1日に発効する見込みであると発表した。ニューヨークで記者団に語った内容として、セルビア主要メディアが報じた。
ヴチッチ大統領は、NISの過半数の株式をロシア企業が保有しているため、セルビアは米ロ関係における「コラテラルダメージ」を受けており、「重い代償を支払う」ことになるとの見解を示した。また、この制裁が発効すれば銀行はNISとの取引を敬遠し、給与支払いやその他の金融取引が困難になると指摘した。
ヴチッチ大統領は、「10月1日までに奇跡が起こるかもしれないが、我々は困難な時期と厳しい冬に直面している。国民が家庭で暖かい冬を過ごし、自動車やバス、トラックの燃料供給を心配しなくて済むよう最善を尽くすが、それ以外の全てははるかに困難になるだろう」と語った。
ウクライナ侵攻を背景に、米国財務省は2025年1月、ロシアのエネルギー部門を対象とする広範な措置の一環としてNISへの制裁を発表した。その後、発効はこれまで6度にわたって延期されてきた。
この制裁は、NISの事業に深刻な影響を及ぼす。NISはセルビア唯一の製油所を北部パンチェヴォ(Pančevo)市に有し、同国唯一の産油会社でもある。制裁が施行されれば、クロアチアのパイプライン運営会社ヤドラン石油パイプライン(Jadranski naftovod, Janaf)は、2024年1月1日から2026年12月31日までの契約に基づくNISへの原油輸送を実行できなくなる。Janafは25日、NISへの原油輸送を10月1日まで継続するための新たなライセンスを付与されたと発表している。
NISの筆頭株主であるロシアのガスプロム・ネフチ(Gazprom Neft)は、制裁発表後に株式の一部を親会社のガスプロム(Gazprom)に譲渡。さらに今月に入り、ガスプロムは保有するNIS株式(1株を除く)の全てを、最終的に同社が支配するサンクトペテルブルク拠点の企業インテリジェンス(Intelligence)社に譲渡した。これにより、現在のNISの株主構成は、ガスプロム・ネフチが44.85%、セルビア政府が29.87%、インテリジェンス社が11.3%となっている。
制裁の影響はすでにNISの業績に表れており、2025年上半期には36億ディナールの純損失を計上し、前年同期の53億ディナールの純利益から赤字に転落した。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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