
セルビア大統領、NIS売却交渉とロシア産天然ガス供給契約交渉について現状を表明-ガス契約は来年3月末までの延長でロシア側と合意
12月23日、セルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、米国の制裁対象となっているセルビア唯一の石油精製業者であるセルビア石油産業(Naftna Industrija Srbije:NIS)の株式売却交渉と、ロシアのガスプロム(Gazprom)との間で行われているロシア産天然ガス購入契約交渉の現状と見通しについて説明した。
ロシアによるNIS株式売却交渉の進展と制裁回避への動き
ヴチッチ大統領は、ロシア側側が保有するNIS株式(56.15%)について、ガスプロムがハンガリーの石油大手MOL(MOL)へ売却する交渉を進めていることを明らかにした。NISは現在、ガズプロムの石油部門であるガズプロム・ネフチ(Gazprom Neft)が44.85%、ガズプロムが間接的に管理するサンクトペテルブルク拠点のインテリジェンス(Intelligence)が11.3%を保有しており、セルビア政府は29.87%を保持している。
米財務省外国資産管理局(OFAC)による制裁の影響で、パンチェヴォ(Pančevo)の精製所は原油不足から10月に操業停止に追い込まれた。OFACはロシア資本の完全撤退を要求しており、交渉期限を2月13日までと定めている。ヴチッチ大統領は、ハンガリーを友邦としてこの売却交渉を歓迎し、来年1月15日までの早期決着を求めた。また、同時期までに第三者との合意に至らない場合は、国家がNISの経営を掌握し、ロシア保有株を買い取る準備があることも強調している。なお、売却先としてはアブダビ国立石油公社(Abu Dhabi National Oil Company:ADNOC)も有力な候補として浮上している。
ガスプロムとの天然ガス供給契約の短期延長とエネルギー多角化
エネルギー供給のもう一つの懸案事項について、ヴチッチ大統領は、ガスプロムとの現行の天然ガス供給契約を2026年3月31日まで3カ月間延長することでロシア側との合意に至ったと発表した。セルビアは2022年に締結された3年間の長期供給契約が今年5月に満了して以降、短期的な延長を繰り返している。ヴチッチ大統領は、冬季のエネルギー供給に不安はないと国民に説明する一方で、ロシア側が長期契約に応じず短期延長を提示し続けている背景には、NISの売却交渉においてセルビア側に圧力をかける意図があることを示唆した。
セルビアは今年約27億立方メートルのガス消費を見込んでおり、ロシア産ガスに加え、ブルガリア経由のコネクターを通じてアゼルバイジャンから年間約4億立方メートルを受給している。エネルギー依存の分散化に向けて、セルビア政府は北マケドニアとの間で年間15億立方メートルの輸送能力を持つ連結パイプラインを建設するプロジェクトに約1億5,300万ユーロを投じる計画であり、さらにルーマニアとの間でも新たなガス・インターコネクターの建設を予定している。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)





























































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