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セルビア大統領、中国との友好関係を背景に重要鉱物の輸出迅速化で合意と発表

6月28日、セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領(Aleksandar Vučić)は、中国が電気自動車(EV)生産に不可欠な重要鉱物の輸出許可手続きを迅速化すると約束したことを明らかにした。ヴチッチ大統領によれば、これは、セルビア中部の都市クラグイェヴァツ(Kragujevac)に工場を構える自動車大手ステランティス社(Stellantis NV)の代理として、ヴチッチ大統領が中国の習近平国家主席(Xi Jinping)に行った要請に応える形で実現したものであるとされている。

この発言は、6月28日にベオグラード等で発生した大規模な反政府デモ参加者と警察部隊との衝突に関する記者会見の席上でなされた。

参考記事

ヴチッチ大統領の説明によると、ステランティス社の代表者から、世界的な貿易摩擦の中でEV生産に必要な重要鉱物を「通常の価格で」入手することが困難になっているとして、同大統領が強固な友好関係を維持する習主席に書簡を送るよう依頼があったという。この要請を受け、ヴチッチ大統領が習主席に働きかけたところ、習主席から直接返信があったとされる。会見でヴチッチ大統領は、その書簡とされる文書の内容を読み上げ、習主席が「すでに関連機関に対し、セルビア側と緊密な意思疎通を保ち、特例として承認手続きを迅速に進めるよう指示した」と述べたと語った。また、書簡には、中国が課すいかなる輸出規制も国際的な慣行に基づくものであり、「セルビアのような友好国を対象としたものでは全くない」と記されていたとしている。

出典:RTS Sajt-Zvanicni kanal

この要請の背景には、ステランティスのクラグイェヴァツ工場がセルビア経済にとって極めて重要な存在であることが挙げられる。同工場は、ステランティス・ヨーロッパが67%、セルビア政府が33%を出資するFCAセルビア(FCA Srbija)によって運営されており、シトロエンC3やフィアット・グランデパンダのEVモデルを生産している。ステランティスとセルビア政府は2022年4月に、同工場でのEV生産開始のために1億9000万ユーロを共同で投資する契約を結んでおり、EV専用の生産ラインは2024年7月に稼働を開始した。ヴチッチ大統領も会見で、同工場がセルビアのGDPと鉱工業生産に大きく貢献していると強調した。

今回の中国による輸出許可の迅速化が、ステランティスのセルビア工場のみを対象とするのか、あるいは同社の他地域の事業にも適用されるのかは現時点では明らかではない。しかし、この一件は、セルビアと中国の間の強固な政治的・経済的関係を改めて示すとともに、世界的なサプライチェーンの緊張が高まる中で、セルビア政府が独自の外交チャネルを駆使して国内の重要産業を保護し、国益を確保しようとする姿勢を明確に示している。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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