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S&P、スルプスカ共和国の格付け「B」を維持も「ネガティブ」見通しを継続

2月9日、S&Pグローバル・レーティング(S&P Global Ratings)は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナを構成する政体(エンティティ)の一つであるスルプスカ共和国(Republika Srpska, RS)の長期発行体格付けを「B」で据え置くとともに、格付け見通し(アウトルック)を「ネガティブ(弱含み)」に維持すると発表した。この判断は、RSが2026年4月に控えるユーロ債の償還に向けた資金調達計画を遂行する上で、政治的な不安定さや不透明な財政管理がリスク要因となっていることを反映している。

S&Pのプレスリリースによれば、スルプスカ共和国は2025年10月に米国財務省の外国資産管理局(Office of Foreign Assets Control, OFAC)がドディック(Milorad Dodik)前大統領および関連団体への制裁を解除したことを受け、資本市場へのアクセスを段階的に回復させている。しかし、2025年9月にドディック氏が憲法裁判所の判決を受けて大統領職を辞任して以降、指導部の法的地位を巡る論争が続いており、この政治的な混乱は2026年10月の総選挙まで継続する可能性が高い。こうした背景から、RSが市場から十分な資金を適切な条件で調達できるかについては、依然として予断を許さない状況にある。

特に懸念されているのが、2026年4月に満期を迎える約3億ユーロのユーロ債の借り換えである。S&Pは、RSが現時点で保有する現金準備高は、今後12カ月間の債務返済額の約35パーセントから40パーセントをカバーするに留まると推定している。仮に資金調達が計画通りに進まず、流動性がさらに低下した場合には、格付けが引き下げられる可能性がある。一方で、予定通りの借り換えに成功し、予備的な流動性が確保されれば、見通しが「安定的(スタティック)」に引き上げられる可能性も残されている。

経済面では、スルプスカ共和国の2025年から2027年にかけての国内総生産(GDP)成長率は年平均3パーセント程度と、比較的底堅く推移すると予測されている。インフレ率もピーク時の17パーセントから低下し、2パーセント前後に落ち着く見通しである。また、最低賃金の引き上げに伴う所得税収の増加により、財政収支は2026年から2027年にかけて概ね均衡に向かうとされている。しかし、人口減少や労働力の流出といった構造的な課題に加え、欧州連合(EU)からの補助金交付の遅延リスクなどが、中長期的な財政の持続可能性に対する懸念材料として挙げられている。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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