【報道】中国企業がスメデレヴォ製鉄所による大気汚染について罰金刑を課される

8月26日付セルビア国内報道は、ベオグラード地裁が、スメデレヴォ製鉄所を所有・運営する中国国有の鉄鋼大手である河鉄集団(HBIS)セルビア法人に対し、大気保護法違反で罰金刑を課す判決を下したと報じた。

スメデレヴォ製鉄所の大気汚染問題に取り組む市民団体「要塞(Tvrdjava)」の発表によれば、ベオグラード地裁は大気保護法違反によりHBISセルビアに対し100ディナール(約8,547ユーロ)の罰金を課したほか、HBIS社員5名に対しても同法違反により各6万ディナール(約512ユーロ)の罰金を課す判決を下した。「要塞」によれば、同判決はセルビアでは初めての大気保護法違反認定の事例であるとされている。「要塞」は同発表において、「この罰金額はHBISが生み出している巨大な利益に比べれば微々たる額であるが、セルビア国家がスメデレヴォにおける大気汚染の存在を初めて認定した証であり、スメデレヴォ市民の今後の闘いにとって良い基盤となるだろう」と述べている。

1913年に設立された旧国営のスメデレヴォ製鉄所は、2003年にUSスティールが一旦は2,300万ドルで買収したが、経営悪化により2012年にセルビア政府に1ドルで再売却し、USスティールは撤退した。その後、製鉄所は深刻な経営危機に直面し、2基の大型溶鉱炉が停止され、約5,000人の労働者が有給休暇扱いになるなど、事実上操業停止状態となっていた。セルビア政府はその間も再度の民営化を目指して戦略的パートナーの公募を行ったが、いずれも不調に終わっていた。

その後、2016年4月に、セルビア政府はHBISとの間で4,600万ユーロでスメデレヴォ製鉄所を売却する契約を締結した。契約締結直後の同年6月には、セルビアを訪問した習近平・中国国家主席がスメデレヴォを訪問し見学するなど、スメデレヴォ製鉄所は中国による対セルビア投資の象徴的な事例として扱われるようになってきている。

一方で、HBISによる買収後に再稼働した同製鉄所に対しては、周辺地域における大気汚染や地下水汚染の原因になっているとの批判が高まっており、こうした批判の高まりが2021年にセルビア全土で展開された大規模な環境保護デモの一因ともなっている。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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