セルビア政府がノヴィ・サド駅崩落事故の関連文書を公開:学生は抗議運動継続を表明
12月12日、2週間にわたって続く学生らの抗議活動を受け、セルビア政府は、15人が死亡したノヴィサド駅の屋根崩落事故に関連する工事文書の公開を開始した。一方で、学生側は全ての要求事項は満たされていないとして抗議運動を継続する方針を表明した。
建設・運輸・インフラ省は、11月1日に発生した駅舎屋根崩落事故について、犯罪性を示唆する可能性のあるすべての文書を公開すると表明した。この決定は、セルビア全国の大学で続く学生等によるキャンパス封鎖への対応として行われた。
12月11日に臨時記者会見を行ったヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、抗議活動の中で警察によって拘束された学生全員を釈放し、有罪判決を受けた者についてはは恩赦を検討すると述べた。ブチッチ大統領は「すべての要求は満たされた。授業に戻ることを期待する」と述べたが、一方で、学生等の動きは純粋に政治的な動きだとの見方を示した。
ヴチッチ大統領の演説中、大統領府前には多数の学生や市民が集まり、ホイッスルを吹き鳴らすなどしてヴチッチ大統領や政府に対する抗議の意思を示した。
12日、セルビア政府は政府ウェブサイト上で関連文書の公開を始めた。
この政府の動きに対し、抗議運動を主導する学生側は、全ての要求事項は満たされていないとして、抗議運動を継続する意向を表明した。学生の代表者は、「ノヴィ・サドでの悲劇についての刑事責任を求める学生や市民に対して、暴力や言葉による抑圧が日夜続いている。特に、ノヴィ・サドでの犠牲者を追悼していた学生を襲った犯人が未だ処罰されていないことを強調したい」と述べている。
学生による抗議運動の発端となったのは、11月22日にベオグラード大学演劇芸術学部の学生が主催したノヴィ・サド駅舎崩落事故犠牲者の追悼集会の際、複数の暴漢が集会参加者を襲撃したことであった。これに抗議する学生らは、11月25日より演劇芸術学部の建物を占拠し、これに呼応する形でベオグラード大学の他の学部の学生も次々と校舎を占拠した。更にこの動きは全国の大学に広がり、ノヴィ・サド、ニシュ、クラグイェヴァツをはじめとした各地の大学で学生らが校舎を占拠し、現在もほとんどの大学で学生による占拠状態が続いている。
また、ベオグラード大学運営側も学生の動きを支持する姿勢を示している。各学部長等を集めた拡大理事会の後、ベオグラード大学のヴラダン・ジョキッチ学長は、「市民として、また学徒として、社会と公益にとって重要な出来事に対し働きかけようとする学生の行動を強く支持する。大学は、この運動に参加した学生を罰することは無い」と述べている。
学生等は、ノヴィ・サド駅舎改修工事に関する公的文書の公開、警察に身柄を拘束されている抗議集会参加者の保釈と彼らに対する刑事処分の取り消し、11月22日の追悼集会襲撃の犯人の特定とその処罰に加え、国立大学予算の2割増加を要求している。学生らはまた、「抗議運動は欧米からの資金援助を受けている」とするヴチッチ大統領の発言にも反発しており、発言の撤回を求めている。
ノヴィ・サド駅は、中国が掲げる「一帯一路」政策の一環として中国企業主導のコンソーシアムによって3年がかりで改修され、2024年7月に工事が完了したばかりだった。
11月1日の事故後、多くのセルビア国民は制度的な汚職と不適切な工事監督が事故の原因にあるとして政府を非難している。セルビア鉄道は崩落した屋根は改修工事の対象外だったと主張しているが、検察は13人を拘束し捜査を進めている。
事故後、建設・運輸・インフラ大臣等2名の閣僚が既に辞任しているが、野党はヴチェヴィッチ(Miloš Vučević)首相及びノヴィ・サド市のジュリッチ(Milan Djurić)市長の辞任も要求している。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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