
セルビア政府、年金・公務員給与の追加引き上げと違法建築物の合法化を発表
9月21日、セルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は記者会見を開き、国民の生活水準向上を目的とした追加経済措置を発表した。この措置には、年金と一部公務員給与の引き上げ、そして国内に多数存在する違法建築物の合法化手続きの簡素化が含まれている。
発表によると、年金は12月1日から12.2%引き上げられ、平均受給額は485ユーロに達する見込みである。また、医療および教育分野で働く人々の給与は10月1日から5%引き上げられ、これにより看護師の平均給与は778ユーロ、教師は960ユーロとなる。
さらにヴチッチ大統領は、国内に約480万件存在するとされる、建築許可や登記なしに使用されている不動産を合法化するための新たな手続きを発表した。「ついに自分のものに(Konačno svoji na svome)」と名付けられたこの措置により、所有者はデジタルまたは書面による簡単な申請を通じて、迅速かつ安価に物件を合法化できる。対象物件の約70%は100ユーロの手数料で手続きが完了するという。ただし、他人の土地や保護地域に建設された物件は対象外となる。
今回の発表は、数ヶ月にわたり続く反政府デモや食料価格の高騰による社会不安に対応する動きの一環である。セルビア政府は1ヶ月前にも、小売業者の利益率に上限を設けるなどの第1弾の経済政策パッケージを発表していた。また、最低賃金についても、10月1日から月額500ユーロ、2026年1月1日からは551ユーロへと段階的に引き上げられることが決定している。
セルビア財務省プレスリリースによれば、マーリ(Siniša Mali)第一副首相兼財務大臣は、これらの措置について「責任ある国家政策の証拠であり、市民の生活水準を向上させるものだ」と述べた。マーリ財相は、インフレ率を上回る賃金・年金の上昇を強調し、2027年末までに平均給与を1,400ユーロ、平均年金を650ユーロに引き上げるという長期目標を改めて示した。一方でマーリ財相は、反政府デモがセルビアの経済成長を妨げていると批判した。
セルビアでは、2024年11月にノヴィ・サド(Novi Sad)駅で発生し、16人が死亡した屋根の崩落事故をきっかけに、政府の汚職や権威主義的な姿勢を非難する大規模な反政府デモが続いている。ヴチッチ大統領は記者会見の質疑応答で、デモに関する質問を「馬鹿げた質問」だと述べ、今回発表した経済措置に焦点を当てるよう報道陣に促した。
政府は一連の経済支援策を通じて国民の支持固めを図ろうとしているが、デモ参加者との間の緊張は依然として続いている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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