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ノヴィ・サド駅崩落事故の責任を巡り、ヴェシッチ前相らの免責認める高裁判決に対し検察が控訴

12月29日、ノヴィ・サド高等検察庁(Više javno tužilaštvo u Novom Sadu)は、16人が死亡した鉄道駅キャノピー崩落事故を巡り、ヴェシッチ(Goran Vesić)前建設・運輸・インフラ大臣ら被告6名に対する刑事手続きを中断したノヴィ・サド高等裁判所(Viši sud u Novom Sadu)の決定を不服とし、ノヴィ・サド控訴院(Apelacioni sud u Novom Sadu)に控訴した。検察側は、同高裁の判断には刑事訴訟法上の重大な違反があり、事実関係の認定も誤っているとして、起訴の正当性を強く主張している。

事の発端は12月24日、ノヴィ・サド高等裁判所が、公共の安全に対する重大な犯罪の疑いで起訴されていた13名のうち、政治的・行政的責任者とされる6名への起訴を棄却したことにある。この決定により、ヴェシッチ前大臣のほか、タナスコヴィッチ(Jelena Tanasković)前セルビア鉄道インフラ公社(Infrastruktura železnice Srbije)前総裁代行、ディモスキ(Anita Dimoski)前建設・運輸・インフラ省次官補、および工事監督に携わった専門家ら計6名への責任追及が一時的に停止され、課されていた自宅軟禁措置も解除された。

同高裁は棄却の理由として、検察側が提示した証拠では、これら6名が犯罪に関与したという「合理的な疑い」を立証するには不十分であると結論付けた。特に裁判所は、検察が9月に提出した修正起訴状を痛烈に批判している。高裁は、4月に裁判所が捜査の補完を命じた際、検察は証人の再尋問や資料収集といった形式的な作業こそ行ったものの、得られた新事実を法的に分析し、起訴内容に反映させるプロセスを怠ったと指摘した。一方で、改修当時のセルビア鉄道インフラ公社総裁であったシュルラン(Nebojša Šurlan)氏や、建設設計・施工に関わった企業の担当者ら残り7名については、構造の安全確認を怠った過失が崩落に直結したとして起訴を承認した。

これに対し検察側は29日に発表した声明において、裁判所の判断は「矛盾に満ちている」と激しく反論した。検察の主張によれば、高裁判事は、本来であれば公開の法廷(主公判)で証拠調べを行い、検察と弁護側の双方が議論すべき「罪の成否」という実体的な判断に、起訴状の審査段階で踏み込みすぎているとされている。検察は、事故に至るまでの被告らの不作為や法規制の無視、およびそれらと惨劇との因果関係を裏付ける十分な証拠を捜査段階で収集済みであると強調した。また、もしこのまま免責が確定すれば、国内法を軽視し、有害な結果を容認した者たちが刑事責任を逃れるという、司法制度上の悪しき前例を作ることになるとの危機感を表明している。

2024年11月1日に発生したこの崩落事故は、中国企業連合(CRIC-CCCC)による約3年の改修工事を経て駅舎が再開した直後に起きたことから、政権ぐるみの汚職や杜撰な管理体制が原因であるとして、国民の激しい怒りを買った。現在も続く抗議活動は、2012年にセルビア進歩党(Srpska napredna stranka:SNS)が政権を握って以来、最大の政治的危機となっている。

なお、ヴェシッチ氏とディモスキ氏については、ノヴィ・サドでの安全過失容疑とは別に、ベオグラード高等裁判所(Viši sud u Beogradu)の管轄下で進められている汚職関連の別事件により、依然として自宅軟禁の身分を維持している。

今後の焦点は、ノヴィ・サド控訴院が地裁の決定を維持するか、あるいは検察の主張を認めて審理のやり直しを命じるかに移る。犠牲者遺族や市民社会からは、行政トップの責任を不問に付すような司法の動きに対し、強い警戒感と批判の声が上がっている。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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