
北マケドニア議会、検事総長の不信任を決議-司法の独立巡り対立激化
7月29日、北マケドニア共和国議会は、リュプチョ・コチェフスキ(Љупчо коцевски)検事総長に対する不信任決議案を、120議席中71議席の賛成で可決した。この動きは法的な拘束力を持たないものの、フリスティヤン・ミツコスキ(Христијан Мицкоски)首相率いる右派政権と司法機関との間の対立を先鋭化させ、検事総長への辞任圧力を強めるものとなる。
この不信任動議は、野党の左派党(Levica)によって提出されたが、ミツコスキ首相が党首を務める与党内部マケドニア革命組織・マケドニア国家統一民主党(VMRO-DPMNE)を中心とする与党多数派が全面的に支持した。ミツコスキ首相はかねてより、2024年2月に就任したコチェフスキ検事総長が「選択的な正義」を行い、検察の評判を傷つけていると公然と非難してきた。一方、最大野党の社会民主同盟は、この決議が「法的に無効で無意味」であるとして採決を欠席した。
今回の決議を巡っては、政府と検察側で法解釈が真っ向から対立している。動議を提出した左派党は、憲法第72条の「すべての任命された公職者は問責の対象となる」という条文を法的根拠としている。
これに対し、コチェフスキ検事総長は、議会による問責は司法の独立に対する立法府の違法な侵害であると強く反発している。検事総長は議会への回答書で、「検事総長の責任を問う手続きは、特別法である検察庁法によって定められており、問責のような政治的責任を問う可能性は規定されていない。これは、独立した機関である検察の機能を保証するためである」と主張した。検察庁法では、検事総長の解任は、検察の統治機関である検察官評議会(Prosecutors’ Council)、または同評議会の承認を得た政府の発議によってのみ可能とされているが、今回はそのいずれの手続きも踏まれていない。
ミツコスキ政権は発足以来、検事総長、検察官評議会、司法評議会(Judicial Council)を「腐敗している」と批判し、トップの交代を目指すキャンペーンを展開してきた。政府は実際に2月、検察官評議会の事前承認なしに独自の解任動議を提出していたが、3月16日にコチャニ(Kočani)で発生し62人が死亡したナイトクラブ火災について、検察による大規模捜査が開始されたことを受け、この動議は保留となっていた。
批評家からは、政権の一連の動きは司法と検察のトップを事実上更迭し、その機能を掌握しようとする計画ではないかとの強い懸念が表明されている。採決前日の28日、ミツコスキ首相は記者団に対し、不信任案が可決されても検事総長が辞任しなかった場合の対応を問われたが、「法と手続きに従って、我々の立場を追って示す」と述べるに留め、具体的な言及を避けた。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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