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審理中の判事が法廷内で射殺される-司法制度の安全対策に衝撃

10月6日、アルバニアの首都ティラナ(Tirana)の控訴裁判所内で、審理中の裁判官が銃で撃たれ死亡する事件が発生した。この事件は同国の政界や社会に大きな衝撃を与え、司法施設の安全対策に関する深刻な問題を浮き彫りにした。

事件が発生したのは、ティラナ控訴裁判所の法廷内であった。土地紛争に関する審理中、訴訟関係者の男が持ち込んだ銃を発砲し、アストリト・カラヤ(Astrit Kalaja)判事が撃たれた。カラヤ判事は病院に搬送されたが、その後死亡が確認された。この銃撃により、他に2名が負傷したものの、命に別状はないという。容疑者は30歳の男とされ、その場で逮捕された。

この前代未聞の事件に対し、政界からは非難の声が相次いだ。ラマ(Edi Rama)首相は「裁判官に対する犯罪的攻撃は、加害者に対する最も厳しい法的対応を間違いなく要求するものだ」と述べ、断固とした姿勢を示した。

歳代野党である民主党のバルディ(Gazment Bardhi)議員団長は、「職務中の裁判官が殺害されたのは過去35年間で初めてのケースであり、アルバニア社会による深い反省が求められる」と指摘した。また、民主党のベリシャ(Sali Berisha)党首は、この事件を「醜悪で犯罪的な行為」と非難し、「今日の国内に存在する大きな治安の不安定さ」の証左であると主張した。

欧州安全保障協力機構(OSCE)ティラナ事務所も「深い衝撃と悲しみ」を表明し、「裁判官への攻撃は、法の支配と民主的制度に対する直接的な攻撃である」との声明を発表した。

事件の発生後、裁判所のずさんな警備体制が明らかになった。捜査当局の発表によると、容疑者は金属探知機を通過した際に警告音が鳴ったにもかかわらず、担当の警備員が身体検査などの適切な対応を怠ったため、銃を持ったまま法廷内への侵入を許したという。この警備員は職務怠慢の疑いで逮捕されたと報じられている。

さらに、今回の事件以前から、アルバニアの司法関係者が暴力の脅威にさらされていること、そして警備体制の強化を求める声が上がっていたことも判明した。匿名の判事が語ったところによると、高等司法評議会(High Judicial Council)は警察当局と裁判所の警備について複数回協議を重ねてきたが、具体的な安全対策の強化には至っていなかった。

一方で、コチウ(Albana Kociu)内相は、「法律上、警察は裁判所建物内の警備に責任を負っていない」との見解を示しており、責任の所在が曖昧になっている実態も浮かび上がった。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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