
IMFがNIS制裁問題によるセルビア経済へのリスクについて警鐘-最大でGDP比2パーセントの財政打撃を予測
12月25日、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)は、セルビア共和国に対する政策調整ツール(Policy Coordination Instrument:PCI)の第2回審査の完了を受けて、国別報告書(Staff Country Report)を公表した。この報告書においてIMFは、セルビアが慎重なマクロ経済政策と十分な予備的バッファーによって困難な環境を乗り切っていると評価する一方、制裁対象となっている国内石油大手NIS(Naftna Industrija Srbije)を巡る問題が、同国の経済および財政に深刻なリスクを及ぼしていると警鐘を鳴らした。
IMFは、セルビアの2025年の実質GDP成長率について、国内の抗議活動や外部環境の悪化、さらには農業生産の減少などを受けて、前年の3.9パーセントから約2.1パーセントに減速すると予測している。2026年以降は3パーセント台への回復が見込まれているものの、その見通しはマクロ経済的に重要な石油会社であるNISの状況解決に大きく依存している。
ロシアのガスプロム(Gazprom)が間接的に56.15パーセントの株式を保有し支配するNISに対しては、米国財務省がロシア資本の排除を求めて制裁を発動しており、10月9日から原油供給が遮断された。これにより、国内燃料消費の80パーセントを供給するパンチェヴォ(Pancevo)石油精製所は、11月25日に操業停止を余儀なくされている。
IMFによれば、NISを巡る問題の解決が長期化した場合、財政への影響はGDPの1パーセントから2パーセントに達する可能性があるとされている。経済成長の鈍化や燃料消費の減少に伴い、付加価値税(Value Added Tax:VAT)や物品税、所得税などの税収が減少する一方で、失業給付やエネルギー支援などの支出が増大すると予想される。また、ロシア側株主の撤退に向けた政府による株式買い取りが必要となった場合、その費用は5億ユーロから20億ユーロ(GDPの0.6パーセントから2.3パーセント相当)に上ると推定されている。
セルビア当局は、2026年第1四半期までの解決を最優先課題としており、ハンガリーの石油大手MOLやアブダビ国立石油公社(Abu Dhabi National Oil Company:ADNOC)などとの間で株式売却交渉が進められている。米国外国資産管理局(Office of Foreign Assets Control:OFAC)は、所有権に関する交渉期限を2026年2月13日と定めている。ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、第三者への売却が不調に終わった場合には政府が管理を引き継ぎ、適切な価格で買い取る準備があることを表明している。
マクロ経済政策の面では、セルビア中銀(National Bank of Serbia:NBS)が厳格な金融引き締め姿勢を維持しており、10月時点の総合インフレ率は2.8パーセントと、目標範囲(3パーセント±1.5パーセント)の中央付近まで低下した。財政面では、GDP比3パーセント以下の赤字目標が維持されており、公共部門の賃金や年金の指数化ルールの遵守が継続されている。エネルギー部門の改革も進められており、家庭用電気料金の6.6パーセント引き上げが10月に実施された。これは、国営エネルギー企業の財務健全性を高め、ロシア依存からの脱却に向けたガス相互接続パイプラインなどの投資資金を確保することを目的としている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)





























































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