
アルバニア、中国資本石油大手幹部ら9人を逮捕 ― 20年にわたる巨額脱税疑惑
7月3日、アルバニア検察当局は、同国最大の石油生産会社である中国資本のバンカーズ・ペトロリアム・アルバニア (Bankers Petroleum Albania, BPAL) の現CEOシャオ・ホンピン (Hongping Xiao) 氏を含む現・元幹部9人を、過去20年間にわたり国家を欺く大規模な脱税スキームを組織した容疑で逮捕したと発表した。
フィエル (Fier) の検察庁によると、BPAL社は2004年から2024年にかけて、アルバニア南部のパトス・マリンザ (Patos-Marinza) 油田から5320億レク(約54億ユーロ)を超える売上高を記録しながら、会計上は毎年損失を計上し続けていた。検察は、BPALが意図的に経費を水増しすることで利益を隠蔽し、法人税の支払いを完全に回避すると同時に、損失を理由に不正な付加価値税 (VAT) の還付を受けていたと指摘している。この捜査は2024年12月、税務調査総局からの付託を受けて開始されたもので、検察は合計14人に対し拘束命令を発出しており、逮捕された9人の他に5人の行方を追っている。
これに対しBPALは同日に発表した声明において、「アルバニア当局の捜査に全面的に協力する」と表明した。その上で、2016年に中国のジオジェイド・ペトロリアム (Geo-Jade Petroleum Corporation) がカナダの旧株主から同社を買収して以降、新経営陣はコンプライアンスを徹底してきたと主張した。また、これまでに同油田へ45億ドルを投資し、売上に対して課されるロイヤリティとして7億3000万ドル以上をアルバニア政府に支払ってきたと述べている。
BPALは、2004年に当時のカナダ企業としてアルバニア政府と25年間の生産物分与契約を締結し、パトス・マリンザ油田およびクチョヴァ (Kuçova) 油田の操業権を得た。契約には、投資費用を回収するまで利益税の支払いが免除される条項が含まれていたとされ、検察は同社がこの仕組みを悪用し、経費を不正に計上し続けていたと見ている。
欧州最大級の陸上油田を巡るこの事件は、アルバニア史上最大規模の経済犯罪の一つと目されており、国家の戦略的資源を管理する政府のガバナンスと、外資企業の活動に対する監視体制のあり方が厳しく問われる事態となっている。
(アイキャッチ画像出典:BANKERS PETROLEUM ALBANIA LTD.)
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