
北マケドニア国営発電公社、再生可能エネルギー転換に向け独KfWおよびEBRDと総額9,700万ユーロの融資契約を締結
12月22日、北マケドニアの国営発電会社である北マケドニア発電公社(Elektrani na Severna Makedonija:ESM)は、ドイツ復興金融公庫(Kreditanstalt für Wiederaufbau:KfW)および欧州復興開発銀行(European Bank for Reconstruction and Development:EBRD)との間で、エネルギー部門の脱炭素化と近代化を目的とした総額9,700万ユーロ(約1億1,400万ドル)の融資契約を締結した。この融資は北マケドニア政府による債務保証が付帯しており、同国が進める「公正なエネルギー移行投資プラットフォーム(JETIP:Just Energy Transition Investment Platform)」の旗艦プロジェクトを推進するための重要な資金源となる。
ESMプレスリリース及びEBRDプレスリリースによれば、今回の融資パッケージの主軸となるのは、ビトラ(Bitola)の石炭採掘場跡地に建設される出力134MWdcの「ビトラ3」太陽光発電所プロジェクトである。同プロジェクトには総額8,700万ユーロが投じられ、そのうち5,000万ユーロをKfWが、3,700万ユーロをEBRDが融資する。これは、EBRDとKfWが西バルカン地域においてプロジェクトの共同融資および実施を共同で行う初の事例となる。ビトラ3は年間180.9GWhの再生可能電力を生成し、年間約13万4,000トンの二酸化炭素排出削減に寄与する見込みであり、2030年までに温室効果ガス排出量を82%削減するという同国の国家目標達成に向けた大きな一歩となる。
また、融資総額のうち残る1,000万ユーロはKfWから提供され、既存の国営水力発電所の再活性化プロジェクトの第3段階に充てられる。この水力発電プロジェクトは、欧州連合(EU:European Union)からの1,000万ユーロの贈与(グラント)を含む総額4,730万ユーロの事業規模であり、改修完了後は国内の電力生産能力を年間50GWh上積みする計画である。ESMのウズンチェヴ(Lazo Uzunčev)総支配人は、ビトラ3に加えて「オスロメイ2(Oslomej 2)」や「ビトラ1」太陽光発電所、さらには「ボグダンツィ(Bogdanci)」風力発電所の第2段階拡張などを通じ、今後2〜3年で国内の再生可能エネルギー生産能力を200MW以上増加させる意向を表明した。
これらのインフラ投資に加え、ESMは組織的なガバナンス強化にも注力している。2025年10月30日には、EUの資金拠出による150万ユーロの技術支援契約をKfWと締結した。この資金は、ESMの内部コンプライアンス機能の確立、腐敗防止策の強化、および「女性主導の石炭転換(Women-Led Coal Transition)」プラットフォームへの参画を通じたジェンダー・インクルージョンの促進に活用される。駐北マケドニアEU代表部のフドリン(Stefan Hudolin)経済協力部長は、不安定な地政学情勢下において、石炭からグリーンエネルギーへの転換は北マケドニアのエネルギー安全保障を確固たるものにすると強調した。またドイツのドレクスラー(Petra Drexler)駐北マケドニア大使も、過去20年にわたるドイツの支援実績に触れ、脱炭素化は国際的な協力体制(チームワーク)によって成し遂げられるものであると述べている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)





























































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