
アヴィオ・ネットワーク、旧国営大手JATテフニカの買収契約を締結-「JAT」の名称は完全に消滅へ
12月18日、セルビアの航空機整備専門企業であるアヴィオ・ネットワーク(Avio Network)は、同業のJATテフニカ(Jat Tehnika)の株式99.38%を取得する株式売買契約(SPA)を締結したと発表した。この買収は、アヴィオ・ネットワークの航空機整備およびテクニカルサポート能力を強化し、整備・修理・オーバーホール(MRO)サービスの提供範囲を拡大することを目的としている。今回の契約に関わる具体的な買収額などの財務条件については公表されていない。
アヴィオ・ネットワーク社の公式LinkedInアカウントへの投稿によると、同社のドゼット(Marija Dozet)執行役員は、今回の株式売買契約の締結について、同社の能力強化と長期的な成長戦略における重要な一歩であると述べている。本取引は、セルビア保護競争委員会(Komisija za zaštitu konkurencije)を含む規制当局の承認やその他の完了条件を満たすことを前提としており、2026年第1四半期に完了する見通しである。
2007年に設立され、ベオグラードのニコラ・テスラ国際空港(Aerodrom Nikola Tesla Beograd)を拠点とするアヴィオ・ネットワークは、ルチ(Ales Luci)氏が全株式を保有している。同社は現在、フラッグキャリアのエア・セルビア(Air Serbia)をはじめ、イージージェット(EasyJet)やルミウィングス(Lumiwings)などの国際的な航空会社に対し、ATR、エアバス、エンブラエルといった幅広い機種のライン整備サービスを提供している。
一方、買収対象となるヤット・テフニカの株式99.38%は、現在チェコの企業であるアヴィア・プライム(Avia Prime)が保有している。アヴィア・プライムは2019年に、セルビア政府および政府系基金が保有していた同株式を取得していた。
ヤット・テフニカの歴史は、セルビア初の国内航空会社であるアエロプト(Aeroput)が独自の技術部門を設立した1927年にまで遡る。その後、第二次世界大戦後にユーゴスラヴィア国営航空(Jugoslovenski Aerotransport: JAT)へと改編され、以降は南東欧・バルカン地域最大の航空会社として、ヤット(JAT)の愛称で知られてきた。ユーゴスラヴィアの解体後は、名称をJATエアウェイズへと改称し操業を継続していたが、2013年に、エティハド航空とセルビア政府の合意に基づいて同社がエア・セルビアへと改編された際に、JATの名称は使用されなくなった。しかし、2006年にJAT本体から分離して着たJATテフニカは、その後も社名にJATの名称を冠していた。同社はベオグラードを拠点とするほか、モンテネグロのポドゴリツァとティヴァト、および北マケドニアのスコピエにもライン整備の拠点を有している。
今回の買収契約締結によりJATテフニカはアヴィオ・ネットワークに吸収され、それに伴いユーゴスラヴィア時代からの名称であるJATの呼称は完全に消滅することとなる。
ヤット・テフニカの最新の年次財務報告によると、2024年の営業収益は43億ディナール(約4,300万ドル/3,700万ユーロ)、純利益は7,430万ディナールを記録した。これは、前年の営業収益39億ディナール、純利益4,180万ディナールと比較して増収増益となっており、同社の経営状況が堅調に推移していることを示している。今回の買収が完了すれば、西バルカン地域における航空整備産業の再編が進み、アヴィオ・ネットワークの市場におけるプレゼンスがさらに高まることが予想される。
(アイキャッチ画像出典:Public domain, via Wikimedia Commons)





























































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