
ハンガリー石油大手MOL、対露制裁下のセルビアNIS株式取得に向け協議開始-ハンガリー政府高官が認める、オルバーン首相はセルビアを訪問
11月27日、ハンガリーのグヤーシュ(Gergely Gulyás)首相府長官はブダペストで行われた記者会見において、同国の石油・ガス大手MOLが、セルビア石油産業(Naftna industrija Srbije:NIS)の株式取得の可能性について協議を行っていることを明らかにした。NISはロシア企業の支配下にあることから米国の制裁対象となっており、今回のMOLによる動きは、同社のロシア資本比率を下げることで制裁を回避し、セルビアへのエネルギー供給を維持することを狙っているものと考えられる。
NISはセルビア国内で唯一の製油所であるパンチェヴォ(Pančevo)製油所と給油所ネットワークを運営する同国エネルギー部門の中核企業である。しかし、ロシアのガスプロム・ネフチ(Gazprom Neft)が株式の56.15%(子会社を通じた間接保有含む)を保有しているため、米国財務省外国資産管理室(OFAC)による対露制裁の対象となった。この影響により、クロアチアを経由する原油輸入ルートが遮断され、過去1ヶ月半にわたり原油の供給が途絶えており、製油所は操業停止の危機に直面している。
グヤーシュ長官は、NISに対する株式取得協議はあくまで上場企業であるMOLが主体となって進めているものであると強調しつつ、ハンガリー政府としても隣国セルビアのエネルギー安全保障を支援するため、この取引を後押しする用意があることを示した。また、同日、ハンガリーのオルバーン(Viktor Orbán)首相はセルビアを訪問し、ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領と会談を行った。オルバーン首相は、書類上の許可だけでなく、実際の供給確保に向けて数日中に交渉を行う意向を示し、ロシアからの石油・ガス供給が続くハンガリーを経由してセルビアへの供給も確保されると主張した。
ヴチッチ大統領は自身のFacebook公式カウントへの投稿を通じて、「オルバーン首相は、他の指導者が思いつきもしない方法で友情と信頼を勝ち取ってきており、現在の世界における数少ない偉大な指導者の一人である」と述べて、オルバーン首相を称賛した。
一方、ヴチッチ大統領は、NISのロシア側所有者に対し、第三者への株式売却が合意に至らない場合、セルビア政府が経営権を接収する準備があると言明している。ヴチッチ大統領によると、MOLのほか、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油会社(Abu Dhabi National Oil Co.:ADNOC)も株式取得に関心を示しており、交渉の行方を見守るため、米国に対して制裁発動の50日間の猶予を求めている状況にある。
ハンガリーのシーヤールトー(Péter Szijjártó)外務貿易大臣は、MOLによるセルビアへの燃料輸出量はすでに倍増しており、12月には前年比2.5倍に達する見込みであると述べているが、グヤーシュ長官は、これによるハンガリー国内の供給への悪影響はないと否定した。
米国側は、ロシア資本の完全な撤退を求めており、今回のMOLあるいはADNOCによる買収交渉が成立するかどうかが、セルビアのエネルギー危機回避の鍵を握ることになる。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)





































































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