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米国、NISのロシア資本完全撤退を要求し制裁免除要請を拒否ーセルビアのエネルギー安全保障は重大局面に

11月15日、セルビアのジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ(Dubravka Đedović Handanović)鉱業・エネルギー大臣は、ロシア資本傘下にある石油ガス会社であるセルビア石油産業(Naftna industrija Srbije, NIS)に対する制裁免除の再延長要請を拒否したと発表した。ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ大臣によれば、米国政府はNISの経営陣変更といった部分的な対応を認めず、ロシア資本の完全な撤退を明確に要求している。

出典:RTS Sajt – Zvanični kanal

この事態を受け、11月16日にはヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領も出席する臨時政府閣議が開催された。ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ大臣は、NISの唯一の製油所であるパンチェヴォ(Pančevo)製油所が、クロアチア経由の原油輸入ルートが制裁により遮断されたことで、11月25日までしか稼働できない可能性があると危機感を示した。ヴチッチ大統領は、今後7日以内にNISに関する決定を下す必要があるとし、ロシア側に対し、いかなる所有権変更の取引も迅速に進めるよう求めると述べた。

出典:RTS Sajt – Zvanični kanal

NISの株式は、ロシアのガスプロム・ネフチ(Gazprom Neft)が44.85%、ガスプロム(Gazprom)が間接的に管理する別会社が11.3%を保有し、セルビア政府は29.87%を保有するに留まる。ヴチッチ大統領は「没収、国有化、財産強奪」を避けるため、欧州やアジアの潜在的投資家とロシア側との交渉が不調に終わった場合、セルビアが「いかなる犠牲を払っても」より良い価格を提示すべきだとの考えを示した。米国財務省外国資産管理室(OFAC)は、所有権変更の交渉期限を2026年2月13日までと設定している。

専門家は、NISが制裁下に留まることの最大のリスクは、二次的な金融制裁の誘発であると警告している。セルビア国有ガス企業であるスルビヤガス(Srbijagas)のバヤトヴィッチ(Dušan Bajatović)CEOや国内金融アナリストらは、NISとの取引を継続する銀行やその他企業が米国の二次制裁の対象となる可能性を指摘しており、これがセルビア経済全体に深刻な影響を及ぼす「最大の理由」であると強調している。

このNISをめぐる不確実性は、天然ガスの供給問題にも影を落としている。11月17日、スルビヤガスのバヤトヴィッチCEOは、ガスプロムとの既存のガス供給契約(今年5月に期限切れ、12月31日まで延長中)について、新たな長期契約の締結は困難との見方を示した。同氏は、欧州連合(EU)によるロシア産ガス輸入禁止計画(2026年以降)を理由に挙げ、当面は3ヶ月から1年程度の短期的な契約延長が現実的だとした。

出典:Radio-televizija Vojvodine

バヤトヴィッチCEOは、ロシア側が天然ガス購入契約を延長しないことは「想像できない」と述べているとしつつも、「慎重になるべきだ」と語った。また、万が一契約が延長されない場合に備え、70日分の備蓄やスポット市場での購入を含む「プランB」および「プランC」を準備しており、今冬の暖房シーズンにおけるガス危機は発生しないと国民に安心を求めた。

ヴチッチ大統領は以前、ガスプロムがNIS問題で交渉力を維持するために長期契約ではなく短期延長を提示した可能性を示唆しており、セルビアのエネルギー安全保障は、NISの所有権問題の迅速な解決が鍵を握る、極めて重大な局面に立たされている。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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