
モンテネグロとJERAがLNGターミナル開発に関する協力覚書を締結-国内では反対運動も
9月10日、モンテネグロ政府と日本の大手電力会社である株式会社JERAは、同国における液化天然ガス(LNG)ターミナルおよびそれに付随するガス火力発電所の開発可能性を共同で調査するための協力覚書(MoU)を締結した。
JERAプレスリリース及びモンテネグロ政府プレスリリースによれば、署名式はイタリアのミラノで開催されたエネルギー関連国際会議「Gastech 2025」の場で行われ、モンテネグロのシャフマノヴィッチ(Admir Šahmanović)エネルギー・鉱業大臣と、JERAの常務執行役員であるウィン(Steven Winn)チーフ・グローバル・ストラテジストによって署名された。
この覚書に基づき、両者は今後、LNGターミナルおよびガス火力発電所プロジェクトの技術的、商業的、財政的な持続可能性を評価する包括的な実現可能性調査を実施することになる。調査には、複数の建設候補地の分析も含まれる予定となっている。
モンテネグロは現在、国内の電源構成の約8割を水力発電に依存しており、安定的なエネルギー供給源の確保が課題となっている。モンテネグロ政府は、今回のJERAとの協力を通じて、エネルギーミックスの多様化、エネルギー安全保障の強化、脱炭素化目標の達成を推進し、将来的には西バルカン地域におけるエネルギーハブとしての地位を確立することを目指している。シャフマノヴィッチ大臣は、「日本は革新と先進技術で知られており、この協力は我が国のエネルギー分野のさらなる発展に不可欠な知識と経験をもたらすだろう」との期待を述べた。
JERAはのウィン氏は、「我々のLNGインフラにおける豊富な経験と実績は、モンテネグロが戦略的なエネルギー目標を達成する上で理想的なパートナーとなるだろう」と述べ、モンテネグロのエネルギー安全保障と脱炭素化のビジョンを支援する意向を示した。
一方で、この計画には課題も存在する。モンテネグロは以前からアドリア海沿岸の港湾都市バール(Bar)でのLNGターミナル建設を検討しており、2023年には前政権が米国企業2社と同様の覚書を締結した。しかし、このプロジェクトは環境保護団体や市民、地方自治体からの厳しい批判を受け、停滞している。
今回のJERAとの覚書締結に際しても、国内の40のNGOや活動家らが、この計画はバールでのLNGターミナル建設を除外した国の2040年国土計画に違反するとして、スパイッチ(Milojko Spajić)首相とシャフマノヴィッチ大臣に計画の撤回を求める公開書簡を送付している。今後のプロジェクトの進展は、こうした国内の合意形成が鍵となる。
(アイキャッチ画像出典:Vlada Crene Gore)
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