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セルビア大統領、反政府デモ主導者に対話を呼びかけー学生側は拒否

8月22日、セルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、国内で数ヶ月にわたり続く大規模な反政府抗議デモの代表者に対し、テレビやインターネットを通じた公開討論を呼びかけた。しかし、デモを主導する学生組織は即座にこれを拒否し、政治的対立の解決に向けた糸口は見えないままとなっている。

ヴチッチ大統領は自身のインスタグラム公式アカウントに投稿した動画で、「セルビアは自国の問題を暴力ではなく、民主的な対話によって解決しなければならない」と述べ、デモを主導する「正当な代表者」3、4人との公開討論に応じる用意があると表明した。

普段は政敵とのテレビ討論を避けることで知られるヴチッチ大統領からの異例の提案であったが、学生側はこれを一蹴した。

デモを主導する学生側の一部であるベオグラード大学哲学部の学生らはX(旧ツイッター)への投稿で、「大統領は我々を何ヶ月もの間テロリストと呼び続けてきた。そのような人物からの対話の呼びかけに応じることはできない」と不信感を表明した。「我々が将来のビジョンや政策について議論するのは、彼が選挙を呼びかけ、その選挙運動が始まった時だ」と述べ、対話の前提として早期の議会選挙の実施を改めて要求した。

この一連の抗議デモは、2024年11月1日に北部の主要都市ノヴィ・サド(Novi Sad)で駅の屋根が崩落し16人が死亡した事故をきっかけに始まった。学生たちは、事故の根本原因は政府や関連機関に蔓延る構造的な汚職にあると主張。さらに、ヴチッチ政権が全ての国家機関を支配下に置き、メディアや野党を抑圧、警察を政権維持の道具として利用し、犯罪組織との繋がりも有していると厳しく非難している。

これに対し、ヴチッチ大統領と政府関係者は全ての疑惑を否定。大統領は、デモが海外からの資金提供や扇動によって行われていると証拠を示すことなく繰り返し主張している。8月中旬にはデモがエスカレートし、国内各地で大統領支持者、反政府デモ隊、警察との間で衝突が発生。これを受け大統領は、秩序を回復するために断固たる措置を取ると発言し、緊張が高まっていた。

今週に入りデモは概ね平和的に推移しているものの、大統領支持者も街頭でデモ中止を求める集会を開くなど、セルビア社会の分断は深刻化している。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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