
コソヴォ解放軍退役軍人らがハーグの特別法廷に対する抗議デモを開催
8月7日、コソヴォの首都プリシュティナ(Pristina)で、コソヴォ解放軍(Kosovo Liberation Army, KLA)の退役軍人組織が主導する大規模な抗議デモが行われた。参加者らは、EU主導でオランダのハーグに設置されたコソヴォ特別法廷(Kosovo Specialist Chambers)が民族的に偏向したものであり、コソヴォ紛争の歴史を書き換えようとしていると強く非難した。
デモはプリシュティナ中心部の広場で行われ、KLA退役軍人組織の呼びかけに応じた数千人の市民がコソヴォ全土から集結したとされている。プリシュティナ市当局は、デモ参加者のために公共交通機関の無料チケットや無料駐車場を提供するなどして支援した。
KLA退役軍人組織の代表であるグツァティ(Hysni Gucati)氏は群衆に対し、「特別法廷はその使命から逸脱している。偏向しており、歴史を歪曲しようとしている」と訴えた。グツァティ氏は、KLAの闘争はミロシェヴィッチ(Slobodan Milošević)政権下のセルビアによる抑圧に対する「我々コソヴォの民の正当な答え」であり、「民族浄化、レイプ、殺人、そしてコソヴォにおけるアルバニア人のアイデンティティの強制的な抹殺に対する解放と生存のための戦いであった」と強調した。なお、グツァティ氏自身も過去に司法妨害と証人脅迫の罪で同法廷により収監されている。
同組織のシラ(Gazmend Syla)氏もまた、国際社会に対し、特別法廷が「我々の歴史を書き換えることを許さない」よう求め、そのような試みは「国際社会と共に築き上げた我々の国家の設立そのものを書き換えることになり、国の基盤を揺るがす」危険性があると警告した。
コソヴォ特別法廷は、1998年から2000年にかけてKLA構成員が少数民族や政敵に対して行ったとされる戦争犯罪や人道に対する罪を裁くため、欧米諸国の要求に基づき、2015年にコソヴォ議会によって設立された。コソヴォの司法制度の一部でありながら、欧米諸国の強い圧力の下で、証人保護の懸念などからオランダのハーグに設置され、EU加盟国を中心とした国々の職員によって運営されている。
これまで同法廷は、KLAの元司令官であるシャラ(Pjeter Shala)氏に禁固13年、ムスタファ(Salih Mustafa)氏に禁固15年の有罪判決を言い渡している。
最近では、戦争犯罪と人道に対する罪で公判中のサチ(Hashim Thaçi)元コソヴォ大統領らの弁護団が、コソヴォ紛争の期間外とされる時期の犯罪容疑を管轄から外すよう求めた申し立てが、技術的な理由で裁判官により棄却された。この決定は、法廷が民族的に偏向しており、KLAの正当な闘争を不当に貶めるものだと考える多くのコソヴォ・アルバニア人の間で、さらなる反発を招いている。
(アイキャッチ画像はハーグの旧ユーロポール本部跡に設置されたコソヴォ特別法廷、出典:Wikimedia commons, public domain)
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