
政権に対する抗議運動を主導する学生が前倒し議会選挙の実施を要求:政治と距離を置く方針から転換へ
5月5日、昨年11月に北部の都市ノヴィ・サド(Novi Sad)で発生した鉄道駅での死亡事故をきっかけに汚職反対の抗議活動を続けてきたセルビアの学生たちが、国内の政治的危機を解決するため、早期議会選挙の実施を要求した。
これまで学生たちは自らの要求が政治的なものではないと主張し、野党と一定の距離を保つ姿勢を維持してきたが、5日に公式Xアカウントを通じて「我々はこの規模の政治危機を解決する唯一の正しい方法は民主主義であると信じる」との声明を発表した。さらに「汚職の根が国家機関にあまりにも深く入り込み、その結果として機関が独立して職務を遂行することを妨げていると固く信じている」と述べ、選挙の実施を求めるとともに、全てのセルビア国民に対し、学生等が支持する政党に投票するよう呼びかけた。学生たちが選挙においてどの政治勢力を支持するかは、現時点では明らかになっていない。
これに対し、アレクサンダル・ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、学生たちの抗議活動は政権転覆を目的としたものだと繰り返し述べ、対抗して親政府集会を組織してきた。
抗議の引き金となったのは、2024年11月1日にノヴィ・サド駅のコンクリート製天蓋が崩落し、16名が死亡した事故である。この事故以降、学生たちは全国的な大規模抗議デモを主導し、駅の改修に関する全文書の公開や事故責任者の追及などを求めてきた。この一連の抗議活動は、与党セルビア進歩党(Srpska napredna stranka, SNS)の党首であったミロシュ・ヴチェヴィッチ(Miloš Vučević)氏が今年1月に首相を辞任する事態へと発展した。
先月には、議会が内分泌科医のジュロ・マツット(Djuro Macut)氏を首班とする新内閣を承認したが、その主要閣僚のほとんどは前政権から留任している。
一部の野党指導者も早期選挙の実施に支持を表明している。公共放送RTS(Radio Televizija Srbije)の報道によると、セルビア人民運動(Narodni pokret Srbije, NPS)のミロスラヴ・アレクシッチ(Miroslav Aleksić)党首は早期選挙が唯一の前進の道であると述べた。また、自由・正義党(Stranka slobode i pravde, SSP)のドラガン・ジラス(Dragan Đilas)党首と新セルビア民主党(Nova Demokratska stranka Srbije, Novi DSS)のミロシュ・ヨヴァノヴィッチ(Miloš Jovanović)党首は、公正な選挙への道筋をつけるために暫定政府を樹立すべきだと呼びかけている。
2012年から政権を握るSNSは、現在、定数250の議会で112議席を占めている。伝統的な連立パートナーであるセルビア社会党(Socijalistička partija Srbije, SPS)の12議席や他の小政党からの支持により、強力な過半数を維持している。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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