
セルビアとNISロシア側株主、米国に対し新たな制裁免除を申請へ
11月9日、セルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、セルビア公共放送RTSのインタビューに応じ、セルビア唯一の石油精製所を運営するセルビア石油産業(Naftna Industrija Srbije, NIS)の原油備蓄が限界に近づいており、あと2週間分しかないため、セルビア政府とNISのロシア側株主が共同で、今週中にも米国政府に対し新たな制裁免除を要請する意向であると述べた。
ヴチッチ大統領は、「11月10日か11日にも、ロシア側および彼らが選定する別のパートナーと共に、米国外国資産管理局(U.S. Office of Foreign Assets Control, OFAC)すなわち米国政府に書簡を送付し、回答を待つことになるだろう」と語った。申請の理由については、「我々が(NISの)経営問題の解決に着手したことは明らかであり、1ヶ月、2ヶ月、あるいは3ヶ月の(制裁)免除が認められるか見極めたい」と述べ、将来的には「所有権の問題の解決が必要になるかどうかも、今後完全に見極めていくことになる」と付け加えた。
また、ヴチッチ大統領は制裁の問題がNISだけにとどまらないと指摘。「我々にはルクオイル(Lukoil)の問題もあり、そちらは11月21日から制裁が始まる」と述べ、エネルギー供給に関する危機感を露わにした。
周辺国の動向との比較において、ヴチッチ大統領は、ブルガリア政府が同国内ブルガス(Burgas)にあるルクオイルの製油所に対し、売却も可能な特別管財人を任命した措置に言及しつつ、「我々は(NISに対し)そのようなことは何もしていない。管財人も任命していない」と述べ、セルビアの対応の違いを強調した。
一方で、ハンガリーが米国からロシア産石油・ガス輸入に関する恒久的な制裁免除を認められたことについては、「オルバーン(Viktor Orbán)首相を祝福する。これは我々にとっても良いニュースだ。(ハンガリー経由の)ガス供給が止められることがなくなる」と歓迎した。同時に、この米国の決定は「ハンガリーと接続する石油パイプラインを建設するという我々の決定が良いアイデアだったことの証左だ」とし、「(パイプラインは)今後1年半で完成させる。これにより、我々はより容易に、異なる方法で石油を購入できるようになる」と、ハンガリー経由のパイプライン(ノヴィ・サドまで)建設の重要性を改めて示した。ただし、セルビアがハンガリーと同様の制裁免除を得られるかについては、「米国が我々に(免除を)認めてくれるか確信はない」「我々は(EU加盟国ではなく)小国であり、理性的でなければならない」と慎重な見方も示している。
米国財務省は今年1月、ロシアのウクライナ侵攻に対するロシアのエネルギー部門への広範な制裁措置の一環として、NISのロシア資本を理由に同社への制裁を発表した。この制裁は数度の延期を経て、10月8日に発効した。制裁が発表された1月時点で、NISの株式はロシアのガスプロム・ネフチ(Gazprom Neft)とガスプロム(Gazprom)が合わせて56.15%を保有し、セルビア政府が29.87%を保有していた。
しかし9月、ガスプロムは保有するNIS株(11.3%マイナス1株)の全てを、ガスプロムの完全子会社ガスプロム・キャピタル(Gazprom Capital)が管理するサンクトペテルブルク拠点の企業「インテリジェンス(Intelligence)」に売却した。この結果、現在の株主構成はガスプロム・ネフチが44.85%、セルビア政府が29.87%、インテリジェンスが11.3%、残りを少数株主が保有する形となっている。
NISは、セルビア北部パンチェヴォ(Pančevo)にある年間処理能力480万トンの石油精製所を運営するほか、国内最大の328ヶ所のガソリンスタンド網を有し、約1万3,500人を雇用している。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)





































































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