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セルビア大統領「NISへの米国による制裁の更なる猶予延長の可能性は無い」

10月5日、セルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、ロシア資本傘下にあるセルビア石油産業Naftna Industrija Srbije, NIS)に対する米国の制裁について、これ以上の猶予措置延長は不可能であるとの見解を示した。NIS側は9度目となる制裁適用延期を求めていたが、10月8日に発効が予定されている。

ヴチッチ大統領は5日夜、テレビ局Pink TVのインタビューに応じ、「米国がNISへの制裁を延期する可能性はもはやない」と明言した。また、セルビア政府によるNISの国有化という選択肢については、「もしやらなければならないとしたら、それは私が取る最後の手段だ」と述べた。さらに、ロシアが政治的利益を理由にNISの所有権を手放すことはないだろうとし、「NISはバルカン半島における彼らの拠点なのだ」と語った。

出典:RTV Pink Official

一方、当事者であるNISは10月3日に、米財務省に対し、10月8日以降も事業継続を可能にするための特別許可を新たに申請したと発表している。同社は、今年3月に最初の要請を提出した後、9月にも米財務省の特別指定国民(Specially Designated Nationals: SDN)リストからの削除を求める修正要請を提出していた。

セルビア国営放送(RTS)の番組に5日朝に出演したエネルギー専門家のジェリコ・マルコヴィッチ(Zeljko Markovic)氏は、10月8日をセルビアのエネルギーシステムにとっての「運命の日」と見るべきではないと述べた。「備蓄がある限り、問題解決に向けた努力を続ける時間はある」と指摘する一方、制裁が長期化すれば、ガソリンだけでなくジェット燃料や石油化学製品の供給にも問題が生じ、ゴムやプラスチックなど関連産業全体に悪影響が及ぶ可能性があると警鐘を鳴らした。NISは先月、市場に供給するための十分な原油備蓄と石油製品があると発表したが、備蓄量や供給可能期間の詳細は明らかにしていない。

NISは、セルビア北部パンチェヴォ(Pancevo)市にある国内唯一の製油所(年間処理能力480万トン)を運営し、国内最大の小売ネットワーク(328ヶ所のガソリンスタンド)を保有する。2025年上半期の同社の財務報告によれば、国内自動車燃料市場全体でのシェアは66%、小売市場では48%に達している。また、ベオグラード空港およびニシュ(Nis)空港に乗り入れる全ての航空会社にジェット燃料を供給している。

同社に対する米国の制裁は、ロシア資本であることを理由に今年1月に発動された。当初、ロシアのガスプロム・ネフチ(Gazprom Neft)が50%、その親会社であるガスプロム(Gazprom)が6.15%の株式を保有していた。その後、制裁を回避する目的で所有構造が変更され、現在はガスプロム・ネフチが44.85%、セルビア政府が29.87%、ガスプロムが支配するサンクトペテルブルク(St. Petersburg)拠点の企業インテリジェンス(Intelligence)社が11.3%を保有し、残りを少数株主が所有する形となっている。

先週、ヴチッチ大統領は、制裁回避策としてロシア側から、インテリジェンス社が保有する11.3%の株式を米国企業が買い取る案や、NISが米国産原油を相当量購入し、クロアチア経由のアドリア海石油パイプライン(Janaf)を通じて輸送する案が提示されたことを認めた。NISは原油輸入の全量をこのパイプラインに依存しており、制裁が発効すれば、2024年から2026年末までに1,000万トンの原油を輸送する現行契約も停止を余儀なくされる。NISが最後に制裁の猶予措置を確保したのは9月30日であった。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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