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NISへの米制裁回避に向け、ロシア側が米国産原油の輸入及び米国企業へのNIS株式売却を提案

10月2日、セルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、ロシア資本の傘下にあるセルビア石油産業(Naftna Industrija Srbije, NIS)に対する米国の制裁を回避するため、ロシア側が二つの案を提示したとの報道を事実であると認めた。この提案には、NISが米国産原油を輸入すること、そしてNIS株式の一部を米国企業が取得することが含まれている。

これは、セルビア国内通信社タンユグ(Tanjug)が同日に報じたもので、10月8日に発効が予定されている米国の対NIS制裁を巡る交渉において、ロシア側から解決策として提示されたもの田とされている。

ヴチッチ大統領は、コペンハーゲンで開催された欧州政治共同体サミットの傍らで記者団に対し、タンユグの報道内容を認めた上で、「問題は米国側がこの提案を受け入れるかどうかだ。私は確信が持てないが、そうなることを期待している。米国が金銭的な利益を求めているとは思わない。もっと大きなゲームが展開されているのだと思う」と述べ、交渉の先行きが不透明であるとの見方を示した。

出典:Српска напредна странка

ロシア側が提示した一つ目の案は、NISが相当量の米国産原油を輸入し、他の国々から調達する原油と混合して精製するというものである。原油はクロアチアのヤナフ(Janaf)パイプラインを通じてセルビアに輸送される見込みとされている。ただし、セルビア北部パンチェヴォ(Pančevo)市にあるNISの精油所は、技術的な成約から、米国産原油のみを精製することには対応していない。

二つ目の案は、現在ロシアのガスプロム(Gazprom)が間接的に支配するサンクトペテルブルクのインテリジェンス(Intelligence)社が保有するNIS株式11.3%を、米国の企業に売却するというものである。この株式は、もともとガスプロムが直接保有していたが、制裁への対応策として9月にインテリジェンス社に譲渡されていた。

米国財務省は今年1月、ウクライナ侵攻に対するロシアのエネルギーセクターへの広範な制裁措置の一環として、ロシア企業が過半数を出資するNISを制裁対象に指定した。その後、セルビア政府の働きかけなどもあり、制裁の適用は複数回にわたり延期されてきたが、最新の期限が10月8日に迫っていおり、セルビアとロシア及び米国の間ではギリギリの交渉が続けられている。実際に制裁が発動されれば、NISの事業、特にヤナフパイプラインを通じた原油輸入に深刻な影響が及ぶことが懸念されている。

現在のNISの株主構成は、ロシアのガスプロム・ネフチ(Gazprom Neft)が44.85%、セルビア政府が29.87%、インテリジェンス社が11.3%を保有し、残りを少数株主が所有している。NISはセルビア国内で唯一の製油所を運営するほか、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ブルガリア、ルーマニアで400以上のガソリンスタンドを展開している。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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