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西バルカン地域のEU加盟支持率に濃淡 ― 最新世論調査でアルバニア91%、セルビア33%

9月2日、欧州委員会(European Commission)は、EUが主体となって実施する定期世論調査「ユーロバロメーター(Eurobarometer)」の最新結果を公表した。この調査は、EUの政策決定の参考とするため、加盟国や候補国などの市民の意識を広範に聴取するものである。

2025年5月から6月にかけて実施された今回の調査では、西バルカン地域の国々の間で、欧州連合(EU)加盟に対する支持率に大きな差があることが浮き彫りとなった。

欧州委員会が運営する西バルカン諸国向けのEU関連ポータルサイト「WeBalkan」上で公表された世論調査結果によれば、西バルカン6カ国のうち、EU加盟への支持が最も高かったのはアルバニアで、回答者の91%が加盟を「強く支持する」または「ある程度支持する」と答えた。アルバニアは、EUに対する「肯定的」なイメージを持つ市民も82%と極めて高い水準にある。同様に、コソヴォでもEUへの肯定的なイメージは64%に上り、両国で親EU感情が根強いことが示された。ブルガリアとの歴史問題などで加盟交渉が停滞する北マケドニアにおいても、69%が加盟を支持しており 、依然として高い意欲を維持している。

一方で、セルビアにおけるEU加盟支持率は33%と、西バルカン地域で最も低い数値となった 。EUに対し「肯定的」なイメージを持つとの回答も38%に留まり、「否定的」(40%)を下回った。この背景には、1999年の北大西洋条約機構(NATO)によるベオグラード空爆や、多くのEU加盟国がコソヴォの一方的独立を承認したことへの反発があると見られている。近年、セルビアはヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領の下、コソヴォ問題に関してセルビアを外交的に支持するロシアや、セルビアへのインフラ投資を拡大する中国との関係を深めており、世論にもその影響が反映された形となった。セルビアのEU加盟交渉は2014年に開始されたものの、法の支配に関する改革の遅れなどを理由に停滞が続いている。

EU加盟交渉の先頭を走るとされるモンテネグロでは、64%が加盟を支持している。複雑な国内情勢を抱えるボスニア・ヘルツェゴビナも全体の支持率は65%と過半数を維持しているが、国内の構成体であるスルプスカ共和国(Republika Srpska)では支持が50%に留まるなど、地域による温度差が見られる。

また、今回の調査では、EU市民の56%がさらなるEU拡大を支持していることも明らかになっており、特に若年層でその傾向が強く見られている。加盟候補国の中ではウクライナへの支持が最も高く、西バルカン地域ではモンテネグロがそれに続いた。他方で、EUやその拡大政策に関する情報がEU市民に十分に行き届いていないという課題も浮き彫りになった。

セルビアでは、EUについて「十分に情報を得ている」と感じる市民はわずか20%であった。EUは、候補国の市民との対話を深め、懸念に対応することで、信頼に基づいた改革プロセスを進める重要性を強調している。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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