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セルビア政府、NISへの制裁適用猶予の180日間延長を米国に要請

7月24日、セルビアのドゥブラヴカ・ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ(Dubravka Đedović Handanović)鉱業・エネルギー大臣は、セルビア政府が米国財務省外国資産管理室(U.S. Office of Foreign Assets Control, OFAC)に対し、ロシア資本が過半数を所有する国内石油大手セルビア石油産業(Naftna Industrija Srbije, NIS)への制裁適用をさらに180日間延期するよう要請したことを発表した。NISに対して現在適用されている米国の制裁適用猶予措置は7月29日に失効する予定となっている。

セルビア政府プレスリリースによれば、ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ大臣は、制裁が発動されればセルビア唯一の石油精製会社であるNISの操業が困難となり、セルビアの経済とエネルギーの安定が著しく損なわれると強調した。特に、今回の延長要請は、パンチェヴォ(Pančevo)製油所への原油を商業的に実行可能な形で調達し続けるために不可欠であると説明している。

米国財務省は2025年1月10日、ロシアのエネルギー部門を対象とする広範な制裁の一環として、ロシア国営のガスプロム・ネフチ(Gazprom Neft)がNISを実質的に支配していることを理由に制裁を発表した。当時、ガスプロム・ネフチはNISの株式の50%、その親会社であるガスプロム(Gazprom)は6.15%を保有していた。その後、ガスプロム・ネフチは保有株の一部(5.15%)を、制裁対象外であるガスプロムに譲渡している。セルビア政府はNISの第2位の株主であり、29.87%を保有している。

米国による制裁発表以降、NISはこれまでに4回に渡り制裁適用を猶予される措置を得ており、直近では6月26日に米国側が4度目の適用延長を認めていた。NISは7月18日に、米国に対して5度目の制裁適用猶予を申請したと発表していた。

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セルビアは現在、原油輸入をクロアチアを経由するヤナフ(Janaf)パイプラインに全面的に依存している。制裁が発動されれば、ヤナフはNISとの間で締結されている輸送契約(2024年1月1日から2026年12月31日までの1,000万トンの原油輸送)を履行できなくなる恐れがある。

ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ大臣は、「セルビア政府は、米国およびロシアと協力し、NISにとって恒久的かつ持続可能な解決策を見出すことに引き続き尽力する」と述べ、これにより原油の継続的かつ安全な供給とパンチェヴォ製油所の円滑な稼働を確保する考えを示した。また、同大臣は、これまでもセルビアの要請を支持してきたハンガリー政府が、今回の要請についても同様に支援することへの期待を表明した。

NISはセルビア国内において300以上のガソリンスタンドを保有し、2024年時点での国内自動車燃料市場におけるシェアは全体で80%、小売市場では48%を占めるなど、セルビアのエネルギー供給において中心的な役割を担っている。また、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ブルガリア、ルーマニアなど近隣諸国でも事業を展開し、グループ全体で13,500人以上を雇用している。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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