
コソヴォ地方選、接戦の末に首都を含む多くの自治体で決選投票へ-北部ではセルビア系市長復帰の見込み
10月12日、コソヴォ全土で地方自治体の首長と議会議員を選出する選挙が実施された。開票速報の結果、首都プリシュティナ(Prishtina)をはじめとするアルバニア系住民が多数を占める自治体の多くで接戦となり、どの候補も過半数を獲得できず、11月9日に予定される決選投票にもつれ込む見通しとなった。一方、セルビア系住民が多数派を占める自治体では、セルビア政府の支援を受ける政党「セルビア人リスト(Srpska Lista, SL)」が圧勝した。
コソヴォの地方選挙制度では、市長は有権者の直接投票による二回投票制で選出される。第1回投票でいずれかの候補者が有効投票総数の過半数を超える票を獲得すれば当選となるが、これを満たす候補者がいない場合は、上位2名による決選投票が後日行われる。一方、市議会議員選挙は、政党や市民リストを対象とした比例代表制で実施される。
コソヴォ中央選挙管理委員会によると、全体の投票率は39.07%であった。首都プリシュティナでは、コソヴォ民主連盟(Lidhja Demokratike e Kosovës, LDK)所属の現職市長ラマ(Përparim Rama)候補が、国政与党である「自己決定運動(Lëvizja Vetëvendosje, LVV)のチェク(Hajrulla Çeku)候補をわずか1%未満の得票差でリードしており、両者による決選投票が確実視されている。
他の自治体でも僅差の戦いが繰り広げられた。南ミトロヴィツァ(Mitrovicë e Jugut/Južna Mitrovica)では、国政最大野党であるコソヴォ民主党(Partia Demokratike e Kosovës, PDK)のタヒリ(Arian Tahiri)候補とLVVのペツィ(Faton Peci)候補の差は約0.4%、票数にしてわずか28票であった。ジラン(Gjilan/Gnjilane)では、LVVの候補が得票率49.8%と、過半数にわずか数票届かず第1回投票での勝利を逃した。
第1回投票で勝利を確定させた候補もいる。PDKはフェリザイ(Ferizaj/Urosevac)で現職市長が圧勝した。LVVはポドゥイェヴォ(Podujevë/Podujevo)、カメニツァ(Kamenica/Kosovska Kamenica)、シュティメ(Shtime/Štimlje)の3市で勝利を収めた。LDKはリピャン(Lipjan/Lipljan)とイストグ(Istog/Istok)で、コソヴォ将来同盟(Aleanca për Ardhmërinë e Kosovës, AAK)はデチャニ(Deçan/Decani)でそれぞれ現職が再選を果たした。また、ドレナス(Drenas/Glogovac)では、独立系として出馬した現職市長のラドロフツィ(Ramiz Lladrovci)候補がPDKの公認候補を上回るなど、予想外の結果も出ている。
セルビア当局発行の車両ナンバープレートの違法化など、クルティ政権による一方的な強硬措置に抗議する形で前回の地方選挙をボイコットしたSLは、今回の選挙では復帰し、セルビア系が多数を占める10自治体のうち9つで決選投票を待たずに市長ポストを確保する見通しとなっている。特に、SLの選挙ボイコットを受けて過去2年間アルバニア系市長が統治していた北部4自治体での勝利は、同党の強い復帰を印象付けた。セルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、「これほど大きく説得力のある支持」を示したセルビア系有権者に感謝の意を表明した。ただし、クロコット(Kllokot/Klokot)では、SLの候補が別のセルビア系政党の候補と決選投票に進む見込みとなっている。
選挙全体について、コソヴォ警察は「平穏かつ深刻な事件なく進行した」と発表。クルティ(Albin Kurti)暫定首相は自身のFacebookアカウントへの投稿で、「コソヴォ市民は責任ある形で地方選挙を経験し、再び民主的な文化を示した」と有権者を称賛した。
一方で、クルティ暫定首相翌13日に行った記者会見で、南ミトロヴィツァでの投票結果を巡り、司法・治安機関に対し出口調査に関する調査を要求した。クルティ暫定首相は、出口調査が最大16%もの誤差を含む不正確な結果を示したことや、投票終了前に勝者に関する虚偽の情報が流されたことを「単なる見落としではなく、選挙プロセスへの干渉であり、民主主義への違反である」と述べて厳しく非難した。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
この記事へのコメントはありません。