KFORがミトロヴィツァの橋におけるプレゼンスを強化:NATO報道官はコソヴォ政府の行動を批判

コソヴォ内外の各種報道によれば、8月30日にコソヴォ警察によって実施された、コソヴォ北部のセルビア政府系事務所の閉鎖措置を受け、NATOが主導するコソヴォ国際安全保障部隊(KFOR)は、ミトロヴィツァの南北を繋ぐ橋におけるプレゼンスを強化したとされている。

30日には、コソヴォ警察による事務所閉鎖措置後、KFORの多国籍専門部隊(Multinational Specialized Unit、MSU)に所属するイタリア国家憲兵隊(Carabinieri)の車両がミトロヴィツァの橋の北側(セルビア人地区側)を塞ぐような形で配置され、同時に、暴徒鎮圧用装備を携行した同憲兵隊要員が橋の中央部に配置されたことが映像で確認されている。

出典:KoSSev Youtubeチャンネル

コソヴォ北部地域情勢に関するセルビア系ニュースポータルサイトのKoSSevによれば、KFORはこの配備について、「通常の訓練行動の一環である」と説明している。

出典:KoSSeV Youtubeチャンネル

KFORウェブサイトの説明によれば、MSUは、「軍としての地位を有する警察隊によって構成された軍事部隊であり、犯罪捜査、群衆・暴徒の統制、情報収集等に従事する」とされている。

また、30日に実施されたコソヴォ警察による北部のセルビア政府系事務所の閉鎖措置について、NATOのダクララー(Farah Dakhlallah)報道官は、自身のXアカウントを通じて、「我々の繰り返しの要請にもかかわらず、KFORとの協調無しに行われたコソヴォ北部での行動にとても失望している。KFORは、コソヴォの全てのコミュニティのために、国連安保理決議1244号によって付託された任務を遂行するための完全な準備が出来ている。緊張緩和及びEUが仲介する対話への完全な関与が必要である」と述べた。

街の中心部を流れるイバル川を挟んでセルビア人とアルバニア人が対峙する形となっているミトロヴィツァは、2004年に発生した大規模暴動をはじめ、コソヴォにおける民族間の暴力的な衝突の発火点となってきた経緯があり、街の中心部おいて南北を繋ぐ橋については、歩行者の往来は可能となっているものの、車両の通行に関しては、紛争終結以来25年間にわたり閉鎖されてきた。ミトロヴィツァの橋の交通再開問題については、EUが仲介するベオグラード・プリシュティナ間対話の議題ともなってきており、2015年には交通再開に向けた合意が一旦は成立したが、ベオグラード・プリシュティナ間対話を通じて成立した他の合意と同様に、コソヴォとセルビアの双方が相手側の義務の不履行を主張し、結果的に合意は履行されないままの状態となっていた。

今年7月、コソヴォ政府はミトロヴィツァの橋における車両通行を再開する方針を発表し、セルビア側との合意無しに交通再開に向けた作業を進めていたが、欧米主要国はこのコソヴォ政府の動きを強く批判し、一方的な交通再開に反対する姿勢を鮮明にしている。

参考記事

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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