
IMFがモンテネグロとの4条協議を完了-財政赤字拡大への対策を勧告
9月26日、国際通貨基金(International Monetary Fund, IMF)はモンテネグロとの年次経済協議(4条協議)を終え、同国の財政赤字が拡大傾向にあるとして、歳出抑制と歳入増加に向けた新たな措置を講じるよう勧告する声明を発表した。
セシャドリ(Srikant Seshadri)氏が率いるIMFのミッションは、9月15日から26日にかけて首都ポドゴリツァ(Podgorica)を訪問し、ミラトヴィッチ(Jakov Milatović)大統領、ヴコヴィッチ(Novica Vukovic)財務大臣、ラドヴィッチ(Irena Radovic)中央銀行総裁をはじめとする政府高官や民間部門の代表者らと協議を行った。
IMFミッションが発表した声明によると、新型コロナウイルス感染症によるパンデミック収束後のモンテネグロ経済は、旺盛な観光需要や移住者の流入に支えられ、2021年から2023年にかけて年平均約9%という力強い回復を遂げたが、その回復局面は成熟期に入ったと分析されている。経済成長率は2024年に3.2%へと減速し、2025年も同水準で推移する見通しである。
インフレ率は、2022年のピーク時から大幅に低下した後、賃金上昇などを背景に再び上昇傾向にあり、2025年8月時点で4.6%に達した。IMFは2025年のインフレ率を月平均4%と予測し、中期的には2%に向けて緩やかに低下していくと見ている。
IMFが特に懸念を示したのは、悪化する財政状況である。政府財政赤字は、2024年の対国内総生産(GDP)比2.9%から、2025年には3.5%から3.7%に拡大すると予測されている。IMFは、新たな歳出抑制・歳入増加策を講じなければ、赤字は拡大を続け、2030年までには対GDP比4%を超えるとの見通しを示した。この背景には、人口高齢化に伴う医療・年金といった社会保障費の増大や、国防関連支出の増加がある。これに伴い、公的債務残高の対GDP比も徐々に上昇し、2030年までには約65%に達すると予測されている。また、経常収支赤字も電力輸出の一時的な減少や輸入需要の増加により、2025年には対GDP比で約18%へと急拡大する見込みである。
こうした状況を踏まえ、IMFはモンテネグロ政府に対し、経済状況の変化に合わせた財政政策の再調整を強く求めた。具体的には、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の均衡を目標とし、公務員人件費の伸びの抑制、非生産的な税制優遇措置の段階的廃止、そして空港の近代化・運営に関するコンセッションから得られる歳入の確保といった措置を提言した。
さらに、IMFはより長期的な課題にも言及し、2035年までに高齢化、国防、気候変動への対応でGDPの5〜6%に相当する追加財源が必要になると指摘した。これに対応するため、公務員制度改革、退職年齢と平均寿命の連動強化、医療費の効率化といった、より踏み込んだ構造改革が不可欠であると強調した。
金融部門については、全体として健全性が保たれていると評価する一方、モンテネグロ中銀(Central Bank of Montenegro, CBCG)の業務上の独立性を確保することの重要性を訴えた。また、経済の多角化を進め、観光業への過度な依存を減らすとともに、今後の賃金上昇は生産性の向上に見合ったものであるべきだとし、経済の持続的な成長に向けた構造改革の必要性を指摘した。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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