
【報道】アルバニア副首相、汚職疑惑で停職処分か―インフラ事業入札を巡る不正捜査の対象
アルバニア国内外メディアは、11月20日、アルバニアの汚職・組織犯罪対策特別検察(SPAK)および汚職対策特別法廷が、ベリンダ・バリュク(Belinda Balluku)副首相兼インフラ・エネルギー相を停職処分とし、国外への渡航を禁止する保安措置を講じたと報じた。バリュク副首相は2025年10月31日に「入札または公売における参加者の平等の侵害」の罪で起訴されており、同国政府の中枢を揺るがす大規模な汚職スキャンダルへと発展している。
Euronewsの報道によれば、SPAKによる捜査の結果、バリュク氏はインフラ・エネルギー相としての職権を利用し、少なくとも2つの主要な公共調達プロセスにおいて特定の事業者を不当に優遇した疑いが持たれている。具体的には、南部沿岸のロガラ(Llogara)トンネル建設(オリクム-ヒマラ間)および首都ティラナの外環道路建設(第4工区)に関する入札であるとされている。特にロガラトンネルの建設事業については、トルコ系企業の共同事業体(Intekar-ASL等)が落札できるよう手続きを操作したとされ、その契約総額は約170億レク(約2億ユーロ)に達すると報じられた。
捜査当局は、バリュク氏が準備段階から契約締結に至るまで一貫して調達プロセスに介入し、競争入札の公平性を著しく阻害したと結論付けている。この一連の不正には、当時入札評価委員会の一員であったエヴィス・ベルベリ(Evis Berberi)氏ら複数の当局者も関与したとされており、彼らに対しても自宅軟禁などの措置が取られた。報道によると、バリュク氏のパスポートは既に当局によって押収されている。
バリュク氏は、エディ・ラマ(Edi Rama)首相の最側近の一人と目されており、2019年からインフラ・エネルギー相を、2022年からは副首相を兼務していた。ラマ首相は2025年の選挙で4期目の続投を決めたばかりであるが、政権の要職にある人物への強制捜査は政権運営に暗い影を落としている。
今回の措置に対し、バリュク氏は、「透明性と説明責任、そして司法の原則に基づいたプロセスであることを望む」と述べるにとどめ、具体的な反論は行っていない。また、ラマ首相も「我々には我々の、司法には司法の仕事がある」として、個別の事件へのコメントを避ける姿勢を貫いている。
アルバニアでは2016年の司法改革を経て2019年にSPAKが設立されて以降、政府高官の汚職摘発が活発化している。これまでにサリ・ベリシャ(Sali Berisha)元首相やイリル・メタ(Ilir Meta)元大統領といった歴代の指導者クラスも捜査対象となっており、今回の現職副首相への処分は、同国の司法機関が聖域なき捜査を継続していることを改めて印象付けるものとなった。
(アイキャッチ画像出典:Dreamstime)





































































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