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EIBが北マケドニアに常駐事務所を開設へ-地域協力とEU統合支援を強化

11月12日、欧州連合(EU)の政策金融機関である欧州投資銀行(European Investment Bank, EIB)のデ・グロート(Robert de Groot)副総裁は、北マケドニアの首都スコピエを訪問し、同国政府との間で常駐事務所の開設に関するホスト国協定に署名した。この協定締結は、同国におけるEIBの物理的な拠点を確立し、西バルカン地域における欧州連合(EU)の支援体制を強化する重要な節目となる。

EIBプレスリリースによれば、協定の署名式には、北マケドニアのミツコスキ(Христијан Мицкоски)首相が立ち会い、ムツンスキ(Тимчо Муцунски)外務・貿易相とデ・グロート副総裁によって文書が取り交わされた。デ・グロート副総裁は、スコピエへの事務所開設が「チーム・ヨーロッパ(Team Europe)」および欧州委員会の新たな成長計画の一環であることを強調した上で、北マケドニアに対し、持続可能な開発、コネクティビティ(連結性)、グリーン・トランジションの推進に加え、医療や教育サービスの改善といったインパクトの大きいプロジェクトの実現を支援する用意があると述べた。

北マケドニア側もこの動きを歓迎しており、ムツンスキ外相は、EIBのプレゼンスが高まることで、政府機関や地方自治体、国内企業との距離が縮まり、より緊密な調整と効率的なプロジェクト実施が可能になるとの期待を示した。また同外相は、これが北マケドニアが現代的で競争力のある欧州経済へと移行しつつある明確なシグナルであると位置づけた。

EIBは1991年以来、北マケドニアに対し、経済、インフラ、自治体、および中小企業(SMEs)支援のために総額16億ユーロを超える投資を行ってきた実績を持つ。特に2019年以降は、北マケドニア開発銀行(Development Bank of North Macedonia)との協力により、920社の北マケドニア企業に対して6億5000万ユーロの融資を提供し、6万1000人の雇用の維持と約2000人の新規雇用創出に貢献している。今回の事務所開設により、従来のエネルギー、運輸、水・衛生インフラへの支援に加え、医療や教育といった社会インフラ分野への技術的・資金的支援の拡大が見込まれている。

今回の訪問中、デ・グロート副総裁はミツコスキ首相やムツンスキ外相に加え、ディミトゥリエスカ=コチョスカ(Гордана Димитриеска-Кочоска)財務相、ニコロスキ(Александар Николоски)副首相兼運輸相、ボジノフスカ(Сања Божиновска)エネルギー・鉱業・鉱物資源相とも会談を行い、今後の協力関係の拡大について協議を行った。

EUのロカス(Michalis Rokas)駐北マケドニア大使は、EIBがEUの金融部門として、北マケドニアのEU統合へのコミットメントを具体的なプロジェクトへと転換する極めて重要な役割を果たしていると評価した。2025年には、EIBグローバル(EIB Global)が北マケドニア経済会議所と提携してオンラインの「脱炭素化ガイド」を立ち上げるなど、気候変動リスクへの対応強化に向けた現地銀行との連携も進められている。スコピエにおけるEIBの拠点開設は、西バルカン地域全体の経済成長とEU統合プロセスを加速させるための戦略的な布石であるといえる。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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