
IMFがセルビアの2025年成長率予測を下方修正:財相は反政府抗議活動を経済停滞の原因として批判
国際通貨基金(IMF)は、4月20日に発表した最新の世界経済見通し(World Economic Outlook)において、セルビアの2025年経済成長率予測を、今年1月時点での予測値である4.2%から3.5%へと0.7ポイント引き下げた。IMFは、米国による新関税やこれに対する各国の対抗措置、世界的な貿易摩擦の影響を理由に、1月時点の予測から多くの国の成長率を下方修正した。世界全体の2025年成長率見通しも3.3%から2.8%に引き下げられた。セルビアを含む欧州新興・途上国の2025年成長率は2.1%と、1月予測(2.2%)から小幅に下方修正された。
一方、セルビアのマーリ(Siniša Mali)財務相は4月22日、セルビアの成長率予測が引き下げられた主因として、昨年11月から続く学生主導の大規模な反政府抗議活動とそれに伴う道路封鎖などの「暴力的行為」を挙げた。
マーリ財務相は声明で「IMFは我が国の経済成長率予測を引き下げたが、これは数カ月にわたる暴力や封鎖の結果である。不幸にも、こうした行為はセルビア経済に壊滅的な影響を与えている」と述べ、「無責任な政治勢力は、経済的な成果がしばしば政治行動の反映であることを理解せず、あるいは気にしていない」と批判した。
セルビアでは2024年11月、ノヴィ・サドの鉄道駅でコンクリート製の屋根が崩落し16人が死亡した事故をきっかけに、学生や労働者、農民、教師らによる全国的な抗議運動が続いている。学生たちは多くの国立大学の学部を封鎖し、事故の責任追及と汚職撲滅を訴えているが、抗議活動は概ね平和的に行われている。マーリ財相は声明で「暴力」と表現したが、その具体的内容については言及しなかった。
セルビア財務省は今年1~3月の経済指標に基づき、2025年第1四半期の実質GDP成長率見通しを従来の4%から約3%へ下方修正しているが、その主な要因として建設部門の停滞が挙げられている。
IMFはセルビア経済について、2026年には4.2%、2027年には4.5%の成長を予測している。また消費者物価上昇率は2025年が4.0%、2026年が3.3%と見込まれている。対GDP比での経常収支赤字は2025年で5.8%、2026年で5.7%の見通しとなっている。
マーリ財相は「今こそ常識の警鐘を鳴らし、これまでに達成した経済水準を守るべき時だ。経済の安定なくして成長も進歩もない」と述べている。
セルビア統計局による最新の発表によれば、セルビアの2024年第4四半期の実質GDP成長率は前年同期比3.3%、2024年通年では3.9%の成長となっている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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