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学生等がRTS封鎖を14日ぶりに解除:議会はREM理事選任やり直しを決定

4月28日、ベオグラードの公共放送RTS(Radio Television of Serbia)本部施設の封鎖を行っていた学生等は、14日間にわたって継続してきた封鎖を解除した。これは、セルビア国民議会の文化・情報委員会が、学生等の要求を受け入れ、電子メディア規制機関(Regulatory Authority for Electronic Media: REM)理事会の新メンバー選出手続きのやり直しを決定したことによるものである。

封鎖の経緯と学生の要求

4月14日夜から始まったRTS封鎖は、16名の犠牲者をだした昨年11月のノヴィ・サド駅での駅舎屋根崩落をきっかけに全国で広がった反汚職抗議デモに関するRTSの報道姿勢に対する抗議が発端だった。学生たちは、REM理事会の新メンバー任命のための公正かつ透明な公募のやり直し、あるいはRTSの閉鎖を求めていた。RTSの封鎖期間中、ベオグラード中心部のタコフスカ通りとコシュトニャク地区のRTS建物のすべての出入口が封鎖され、RTSの番組編成にも大きな支障が出ていた。

参考記事

学生たちはソーシャルメディアへの投稿で「戦いには勝ったが、闘いは続く」と述べ、今後は大学内での封鎖や抗議活動を継続する方針を表明している。RTS側は封鎖を「違法」と主張しつつも、4月29日朝の通常番組放送を取りやめ、事前収録のニュースのみを放送した。

REM理事選出手続きのやり直し

学生たちが封鎖を解除する直接的な契機となったのは、議会の文化・情報委員会がREM理事会メンバー選出に関する前回の公募を無効とし、新たな公募を発表したことだった。前回の公募では、候補者18人中8人が辞退し、選考プロセスの不透明さや違法性が指摘されていた。市民団体や野党も「REMは与党セルビア進歩党(SNS)に有利なメディア規制を行っている」と批判してきた。

REM理事会は9名の理事によって構成され、オンブズマン、大学、ジャーナリスト協会、芸術家団体、子ども権利団体、少数民族評議会、宗教団体など9つのステークホルダーが候補者を議会に提案し、議会は過半数をもってこれを選出することになっている。REM理事の任期は6年で、メディアのライセンス付与やRTS取締役会メンバーの任免など、重要な決定権を有している。

政治的・社会的反響

今回の封鎖解除を受けて、一部の野党政治家や市民団体は「新たな選考プロセスの監視と継続的な圧力が不可欠」と訴えている。野党「緑の左派戦線」のラゾヴィッチ(Radomir Lazović)議員は「前回のREM理事選出は多くの法違反があり、市民、特に学生の圧力がなければ是正されなかった」とコメントした。

一方、ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は「REMの理事選出はRTSとは無関係」とし、「なぜREMや議会を封鎖しなかったのか」と学生側を批判。さらに、「封鎖によるサービス業への打撃で経済成長率が予想を下回った」とも述べ、抗議活動への強い不満を表明した。

セルビアにおけるメディアと民主主義の課題

セルビアでは、ノヴィ・サド駅での事故以降、学生・市民による抗議活動が全国に拡大し、大学や学部の封鎖も続いている。学生たちはRTSの報道が政府寄りで抗議活動の規模や内容を十分に伝えていないと批判し、「メディアの自由と民主主義の回復」を訴えてきた。RTS側は「全ての政治的立場に対話の場を提供している」と反論している。

また、今回の封鎖解除後も、大学や公共空間での抗議活動は続く見通しであり、学生たちは「REM理事選出プロセスの透明性確保」「ノヴィ・サド駅事故の全関連文書公開」「責任者の訴追」などの要求を引き続き掲げている。

参考記事

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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