
ボスニア検察がセルビア人共和国による国家機関活動禁止措置に対する捜査を開始
3月6日、ボスニア・ヘルツェゴビナ国家検察庁は、スルプスカ共和国(RS)議会がドディック(Milorad Dodik)RS大統領に対するボスニア国家裁判所による有罪判決後に、RS領域内での国家機関の活動を禁止した決定について、捜査を開始したと発表した。
憲法秩序への攻撃の疑い
ボスニア国家検察庁はウェブサイト上で発表したメディア向けの声明において、「2024年12月より、ボスニア刑法第156条の『憲法秩序への攻撃』という犯罪の疑いにより捜査を実施している」と明らかにした。この捜査は、スルプスカ共和国が採択した一連の法律に関連していると見られている。
RS議会は2月27日に、ドディックRS大統領の有罪判決に対応して、国家レベルの裁判所、検察庁、さらに国家捜査保護庁(SIPA)などの国家機関のRS領域内での活動を禁止する4つの法律を採択している。
国際社会の懸念と対応
この状況に対し、ボスニア国家の集団大統領制におけるボシュニャク系メンバーであるベチロビッチ(Denis Bećirović)氏は6日、欧州連合(EU)に対して、国内の平和と安定を維持するための具体的措置を求めた。現地メディア「ビイェスティ」によると、ベチロビッチ氏は「(ボスニア紛争を終結させた)デイトン和平合意及びボスニア憲法に反する行動を防ぐため」のEUがボスニアに派遣している多国籍軍であるEUFORの増強を含む対応を要請したとされている。
危機の背景
2月26日、ボスニア国家裁判所はドディック氏に対し、デイトン和平合意の履行を監督する国際的に任命された高等代表の決定に従わなかったとして、禁錮1年および6年間の大統領職からの排除を言い渡した。この高等代表制度は、1995年のデイトン和平合意に基づいて設置され、広範な権限を有している。
ドディックRS大統領は、有罪判決が出た場合には「却下する」との姿勢を示すと同時に、RSが国家レベルの機関から撤退を開始すると述べていた。その後のRS議会による国家機関活動禁止法の採択は、こうした姿勢を実行に移したものと見られている。
ボスニア・ヘルツェゴビナの複雑な統治構造
デイトン和平合意に基づき、ボスニア・ヘルツェゴビナはスルプスカ共和国とボスニア・ヘルツェゴビナ連邦という2つの自治体で構成されている。両構成体はそれぞれ独自の政府と議会を持ち、国家レベルの政府によって緩やかに結びつけられている構造となっている。
今回の危機は、この複雑な統治構造と民族間の緊張関係を背景に発生したものであり、国際社会はボスニア・ヘルツェゴビナの安定と統一性の維持に懸念を示している。ロシア、セルビア、ハンガリーがドディック氏への支持を表明する一方、西側諸国は法の支配の尊重を求めており、バルカン地域における新たな地政学的対立の構図が浮かび上がっている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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