上川外相がボスニア・ヘルツェゴヴィナを公式訪問

7月18日及び19日、上川陽子外相がボスニア・ヘルツェゴヴィナを公式訪問し、クリシュト閣僚評議会議長、コナコヴィッチ外相等との会談を行った。

日本の外相のボスニア・ヘルツェゴヴィナ訪問は、2021年5月の茂木外相(当時)による訪問以来、約3年ぶりとなった。

1.クリシュト閣僚評議会議長との会談

上川外相は、クリシュト(Borjana Krišto)閣僚評議会議長(Chairwoman of Council of Ministers of Bosnia and Herzegovina、首相に相当)と会談を行った。外務省発表によれば、クリシュト議長からは、ボスニア・ヘルツェゴヴィナに対するこれまでの日本からの支援に対する謝意が述べられるとともに、日系企業のボスニア・ヘルツェゴヴィナへの進出を評価する旨が述べられた。一方、上川外相からは、日本が進める「西バルカン協力イニシアティブ」の背景を説明した上で、西バルカンの発展のためには地域内諸国間の協力と欧州統合プロセスが重要であると指摘し、日本はボスニア・ヘルツェゴヴィナの和平評議会(Peace Implementation Council, PIC)のメンバーとして今後もボスニア・ヘルツェゴヴィナの安定と発展に貢献するとの意向を伝えた。

クリシュト議長は、今年3月にボスニア・ヘルツェゴヴィナのEU加盟交渉が決定されたことを含め、ボスニア・ヘルツェゴヴィナのEU加盟に向けた取り組みを説明した。これに対し上川外相は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの安定の重要性を指摘し、全ての関係者が団結して国造りが進むことを期待する旨を述べた。

2.日・ボスニア・ヘルツェゴヴィナ外相会談及びワーキングディナー

上川外相は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナのコナコヴィッチ(Elmedin Konaković)との間で、二国間外相会談及びワーキングランチを行った。

外務省発表及びボスニア・ヘルツェゴヴィナ外務省発表によれば、コナコヴィッチ外相からは、ボスニア・ヘルツェゴヴィナに対するこれまでの日本からの支援に対する謝意が述べられるとともに、ボスニア・ヘルツェゴヴィナのEU加盟に向けた国内改革の取り組みについて説明がなされた。これに対し上川外相からは、法の支配に基づく国際秩序を重視する日本の外交方針、「西バルカン協力イニシアティブ」の下での日本の西バルカンへの関与について説明がなされ、また、これまでの日本によるボスニア・ヘルツェゴヴィナへの支援や、今後予定されている森林火災リスク低減のための技術協力について触れられた。

コナコヴィッチ外相から現在のボスニア・ヘルツェゴヴィナ情勢について説明がなされたのに対し、上川外相はボスニア・ヘルツェゴヴィナの安定の重要性を強調し、両外相はボスニア・ヘルツェゴヴィナの安定化に向けて連携していくことを確認した。

コナコヴィッチ外相は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナEのU統合プロセスについて述べる中で、特に観光分野をはじめとした経済・投資の面での欧州統合の重要性を強調した。

このほか、両外相は査証免除、ウクライナ情勢、大阪・関西万博についても議論を行った。

3.シュミット上級代表との会談

外務省発表によれば、シュミット(Christian Schmidt)ボスニア・ヘルツェゴヴィナ上級代表と会談を行った上川外相は、日本がボスニア・ヘルツェゴヴィナの主要3民族のいずれに対しても中立的な立場を活かして、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの国造りを支援してきたことを述べつつ、日本は今後もPIC運営委員会メンバーとして、「西バルカン協力イニシアティブ」の下で、シュミット上級代表を支持し、ボスニア・ヘルツェゴヴィナを支援していく旨を述べた。

シュミット上級代表は、現在のボスニア・ヘルツェゴヴィナ国内情勢について説明して上で、特に中小企業などの民間セクターに対する支援等の日本の取り組みを高く評価していと述べた。

上川外相は、日本が1997年以降、上級代表事務所(OHR)運営を支援していることを指摘し、両者は、今後もOHRの効率的な運営に向けて協力することで一致した。

このほか、上川外相はボスニア・ヘルツェゴヴィナ訪問中、現地国連機関・NGO関係者との意見交換サライェヴォ市内で開催されている漫画展の視察スレブレニツァ・ギャラリーの視察を行った。

(アイキャッチ画像出典:ボスニア・ヘルツェゴヴィナ外務省)

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