
セルビア大統領、NISへの制裁に関する米国との協議は「困難」と表明
9月25日、国連総会出席のためニューヨークを訪問中のセルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は記者団に対し、前日24日に行った米国のルビオ(Marco Rubio)国務長官との会談が困難なものであったと述べた。会談の主要な議題は、ロシア資本が大半を所有するセルビア石油産業(Naftna Industrija Srbije: NIS)に対する米国の制裁についてであった。
ヴチッチ大統領は、9月26日に発効が予定されているNISへの制裁の適用をさらに1〜2か月延期するようルビオ国務長官に要請したことを明らかにした。しかし、「会談は容易ではなかった。仮にさらに1ヶ月の適用延期が決定されたとしても、それはルビオ長官が我々の嘆願に注意深く耳を傾けてくれた結果だろう。しかし、今回こそは制裁を実行するという彼らの強い決意が見て取れた」と述べ、見通しが厳しいとの認識を示した。
米国財務省は今年1月、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシアのエネルギー部門を標的とする広範な制裁の一環としてNISへの制裁を発表した。その後、制裁の適用はこれまでに6回延期されている。制裁の影響はNISの経営を直撃しており、同社は2025年上半期に36億ディナール(約3,070万ユーロ)の純損失を計上し、前年同期の53億ディナールの純利益から赤字に転落した。
制裁発表当初、NISの株式はロシアのガスプロム・ネフチ(Gazprom Neft)が50%、その親会社であるガスプロム(Gazprom)が6.15%を保有していた。その後、制裁を回避する動きとして、ガスプロム・ネフチは保有株の一部をガスプロムに移管し、さらにガスプロムは今年9月、保有する全株式(1株を除く)を自身が管理するサンクトペテルブルク拠点のインテリジェンス社に移管した。これにより、現在のNISの株主構成はガスプロム・ネフチが44.85%、セルビア政府が29.87%、インテリジェンス社が11.3%となっている。
セルビア政府は当初、米露間のハイレベル協議が制裁パッケージ全体に好影響を与えることを期待していた。しかし、トランプ(Donald Trump)米大統領が国連総会の場でウクライナのゼレンスキー大統領と会談後、ウクライナが戦争に勝利し得るとの姿勢を鮮明にしたことで、ロシアの伝統的な友好国であるセルビアの立場はより困難になっているとヴチッチ大統領は認めた。
一方で、ヴチッチ大統領はルビオ国務長官との会談について、NISの問題だけでなく、二国間の政治・経済関係の強化や安全保障上の課題についても重要かつ内容の濃い議論が行われたと公式に発表している。特に、米国の関税問題、新規投資の可能性、エネルギーや新技術分野での協力について協議したと言及した。また、ヴチッチ大統領は、コソヴォに住むセルビア人の安全確保やベオグラード・プリシュティナ間対話のプロセスにおける米国の役割に謝意を表明するとともに、セルビアの欧州連合(EU)への加盟に対する米国の支持を高く評価した。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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