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米国がセルビアに貿易協定案を提示-セルビアは関税緩和に期待

10月16日、セルビアのマーリ(Siniša Mali)財務大臣は、訪問先のワシントンD.C.で、米国政府から二国間貿易協定の枠組みに関する提案を受け取ったことを明らかにした。セルビア側は交渉継続に前向きな姿勢を示しており、今年8月から米国が賦課している高率関税の問題解決に向けた動きとして注目される。

マーリ大臣は、国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会出席のためワシントンD.C.を訪問中のところ、セルビア・メディアの取材に対し、数週間前に米国から提案があったと述べた。セルビア財務省プレスリリースに掲載されたマーリ大臣の発言によれば、同大臣は、今後数日中にヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領と協定の具体的内容を協議し、米国との交渉を再開する用意があるとした上で、「協定が間もなく最終決定されることを確信している」と期待感を示した。

この動きの背景には、トランプ(Donald Trump)米大統領が2024年の貿易赤字是正を掲げて導入した一連の関税措置がある。セルビアからの輸入品に対しては、当初37%の関税率が示唆された後、最終的に35%に修正され、2025年8月1日から適用されている。この関税措置がセルビア経済に与える影響についての公式なデータはまだないが、今回の協定案提示は、両国間の新たな貿易関係構築に向けた重要な一歩となる可能性がある。セルビア統計局のデータによれば、2024年のセルビアの対米輸出は約6億1950万ユーロ、輸入は約6億8370万ユーロであった。

この高関税は、セルビア国内の生産拠点で製造した製品を北米市場向けに輸出しているTOYO TIREのような、セルビアに進出した日系企業に対しても大きな影響を与えており、日経新聞などの報道によれば、TOYO TIREは米国内の工場に大型の投資を行うことを計画中であると言われている。

マーリ大臣はまた、IMFのリー(Bo Li)副専務理事らとの会談において、世界経済が多くの不確実性に直面する中でもセルビア経済はマクロ経済の安定を維持し、好調に推移していると強調した。同大臣によれば、セルビアの今年の経済成長率は2.3%以上が見込まれ、公的債務の対GDP比は43%と、ユーロ圏平均の約89%を大幅に下回る水準で推移している。

さらにマーリ大臣は、セルビアの経済戦略が保護主義とは一線を画し、積極的な市場開放にあると力説した。セルビアは昨年、中国、エジプト、アラブ首長国連邦と自由貿易協定(FTA)を締結し、現在は韓国とも交渉を進めている。大臣は、「これらのFTAを通じて、人口約670万人のセルビアは、合計で25億人にのぼる市場へのアクセスを得ることになる。これが海外からの直接投資を呼び込み、雇用を創出し、経済の競争力を高めている」と述べ、市場開放の利点を訴えた。

来週にはIMFのミッションがベオグラードを訪問し、2026年の国家予算に関する協議が行われる予定であり、米国との貿易協定交渉の行方とともに、セルビアの経済政策は引き続き国際的な注目を集めることになりそうだ。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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