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ボスニア・ヘルツェゴビナのガスパイプライン「南部相互接続」、米国企業主導による事業推進で原則合意

11月21日、在ボスニア・ヘルツェゴヴィナ(BiH)米国大使館は、BiHを構成する二つの政体(エンティティ)の一つであるボスニア・ヘルツェゴビナ連邦(FBiH)の政党指導者らと会談し、同国のエネルギー安全保障にとって極めて重要なガスパイプライン計画「南部相互接続(Southern Interconnection)」の開発、建設、および管理を、米国の民間企業が主導するという提案について原則合意に達したと発表した。

同大使館のギンケル(John Ginkel)臨時代理大使は同日、FBiHの連立与党を構成する5名の主要指導者と会合を持った。出席者には、社会民主党(SDP)のニクシッチ(Nermin Nikšić)FBiH首相、クロアチア民主同盟(HDZ BiH)のチョーヴィッチ(Dragan Čović)BiH民族院副議長、人民と正義(NiP)のコナコヴィッチ(Elmedin Konaković)BiH外相、我らの党(NS)のチュディッチ(Sabina Ćudić)BiH代議院議員、およびクロアチア民主同盟1990(HDZ 1990)のツヴィタノヴィッチ(Ilija Cvitanović)BiH民族院議員が含まれており、各指導者は本プロジェクトを可能な限り早期に建設する必要性について全会一致の意向を示したとされる。米国大使館は、米国の民間投資家が参入することで建設が迅速に進み、信頼性が高く手頃な価格の米国産液化天然ガス(LNG)の確保が可能になると強調している。

本件に関しては、ライト(Chris Wright)米国エネルギー長官も20日にソーシャルメディア上で言及しており、南部相互接続を含む近代的なインフラへの継続的な投資が長期的なエネルギー安全保障の鍵であると指摘した。具体的には、クロアチアのクルク島(Krk)にあるLNGターミナルからボスニアへ米国産LNGを供給することで、ロシア産ガスへの依存を終わらせる狙いがある。

現在、ボスニア・ヘルツェゴビナは国内でのガス生産を行っておらず、その供給の全てをセルビアを経由する「トルコストリーム」を通じたロシアからの輸入に依存している状況にある。2023年の統計では、同国は2億2548万立方メートルのガスを輸入しており、国際エネルギー機関(IEA)のデータによれば、ガスは同国のエネルギー供給の2.6%を占めている。

南部相互接続プロジェクトは、クロアチアのガス輸送システム運営会社プリナクロ(Plinacro)とFBiHのBHガス(BH-Gas)が共同で計画しているもので、クロアチア国内の区間が74キロメートル、ボスニア国内の区間が169キロメートルとなる予定である。想定される年間輸送能力は最大15億立方メートルとされている。同プロジェクトに関連する法案は、政治的な対立により長らく停滞していた経緯がある。2021年にFBiH議会下院で承認されたものの、上院での通過に至らず2023年に一度議題から撤回された。しかし、米国政府からの強い働きかけもあり、2024年12月に下院で、続いて2025年1月には上院で法案が可決され、法的枠組みが整えられていた。

今回の合意は、長年の政治的懸案であった同パイプラインの運営主体を巡る問題を、米国企業という第三者が介入することで解決へ導く可能性を示唆している。今後、米国企業の参画に関する詳細な協議が進められる予定であり、バルカン地域におけるエネルギー供給ルートの多角化に向けた動きが加速することが期待される。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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