
米制裁を受け「ロシア側株主がNIS株式売却に合意」とセルビア担当大臣が発言
11月19日、セルビアのジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ(Dubravka Đedović Handanović)鉱業・エネルギー大臣は、同国の石油・ガス最大手であるセルビア石油産業(NIS)の過半数株式を保有するロシア側株主が、その保有分を売却することに合意したと明らかにした。これは、ウクライナ情勢に関連して米国がロシアのエネルギー部門に対して課している制裁措置がNISにも適用されたことを受けた動きであり、同社の事業継続を確保するための不可欠な措置となる。
NISの株式構造は、ロシアのガスプロム・ネフチ(Gazprom Neft)が44.85%、ガスプロム(Gazprom)の間接支配下にあるサンクトペテルブルク拠点のインテリジェンス(Intelligence)が11.3%を保有しており、ロシア側が合計で56.15%を握っている。セルビア政府の持ち分は29.87%である。ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ大臣によると、ロシア側株主は現在、株式の売却に向けた交渉を進めている最中であるが、交渉が完了するか、少なくとも主要な詳細が確定するまでは、買い手候補の名前は公表されない方針だとされている。
今回の事態の発端は、米国財務省が2025年1月に発表した対ロシア制裁パッケージにNISが含まれたことにある。数度の延期を経て、この制裁は10月8日に発効した。NISはこれまで、ロシア側株主に対し、経営権の移譲に関する第三者との交渉を理由に、米国財務省外国資産管理室(OFAC)へ通常業務の継続を認めるライセンスの発行を求めていた。しかし、米当局はこの要請を拒否し、ロシア側株主の完全な撤退を要求した経緯がある。これを受け、NISは11月18日、同社の円滑な事業運営を可能にするための特別ライセンスの発行を求める新たな申請をOFACに行った。
セルビア国内のエネルギー供給にとって、事態は切迫している。NISが運営するパンチェヴォ(Pančevo)製油所はセルビア唯一の製油所であるが、クロアチアを経由する原油輸入ルート(ヤナフ・パイプライン)が制裁により遮断されているため、手持ちの在庫による操業は11月25日までしか継続できないとの見通しをセルビア政府は示している。ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ大臣は、国民生活への影響を避けるためあらゆるシナリオに備えているとしつつ、製油所の稼働維持と新たな原油供給ルートの確保が急務であると強調した。
これに先立ち、ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は16日に開催された緊急政府閣議において、NISの所有権に関する決定を今後7日以内に行う必要があると述べていた。ヴチッチ大統領は、欧州やアジアの潜在的な投資家がロシア側と買収交渉を行う見込みであるとしつつも、もしこれらの民間交渉が決裂した場合には、資産の没収や国有化といった混乱を避けるため、セルビア政府が「いかなる代償を払ってでも」介入し、より良い条件で解決を図る覚悟を示している。
また、16日の閣議ではガス部門の改革についても決定がなされた。ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ大臣は、EU基準に準拠するため、ガスインフラの管理業務を新設される企業に移管し、国営ガス会社であるスルビヤガス(Srbijagas)は今後、市場へのガス供給業務に専念することになると発表した。これは電力部門ですでに実施された発送電分離と同様の改革であり、エネルギー部門の透明性と安全性を高める狙いがある。
政府はさらに、エネルギー安全保障強化の一環として、石油・ガス法の整備や備蓄の積み増しを進めると同時に、ルーマニアや北マケドニアとの新たなガス・インターコネクター建設を通じて供給源の多角化を図る方針である。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)







































































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