
EU、セルビアと北マケドニアをAI開発拠点「アンテナ」に選定
10月13日、欧州高性能コンピューティング共同事業体(European High Performance Computing Joint Undertaking, EuroHPC JU)は、既存の「AIファクトリー」のサービスを拡大・強化するため、セルビア及び北マケドニアを含む13カ国に「AIファクトリー・アンテナ」を設置することを発表した。この構想は、各国のAIエコシステムを強化し、欧州全域でAIに最適化されたスーパーコンピューティングリソースへのアクセスを拡大することを目的としている。
EuroHPC JUのプレスリリースによれば、AIファクトリー・アンテナは、既存のスーパーコンピューティング拠点である「AIファクトリー」に接続するノードとして機能し、現地の研究機関、新興企業、中小企業、公的機関などが遠隔でAIに最適化されたコンピューティングリソースを利用できるようにするものである。欧州連合(EU)はこのアンテナ設置に約5,500万ユーロを投資し、さらにEuroHPC JU参加国からの拠出金によって補完される。
セルビアでは、国内8つの大学や研究機関から成るコンソーシアムである「セルビア人工知能アンテナ・ファクトリー(Serbian Artificial Intelligence Antenna Factory, SAIFA)」が国内のAIイノベーションのハブとなることを目指す。SAIFAは、文化・言語、持続可能性、ヘルスケア、農業分野に重点を置き、国内の既存の高性能コンピューティング(HPC)インフラをギリシャの「Pharos AIファクトリー」およびイタリアの「IT4LIA AIファクトリー」と統合する。このプロジェクトには、複数の科学研究所や学部のほか、セルビア政府のIT・電子政府室が参画する。
北マケドニアでは、スコピエの聖キリル・メトディウス大学(Sts. Cyril and Methodius University in Skopje)が政府の支援を受けて実施する「VEZILKA」プロジェクトがアンテナとして機能する。ギリシャの「Pharos AIファクトリー」に接続し、健康、エネルギー、文化・言語、農業、そして行政のデジタル変革といった分野におけるソリューション提供とイノベーション支援に注力する。
今回の一連の構想を主導するEuroHPC JUは、欧州がスーパーコンピューティングの分野で世界的なリーダーとなることを目指し、EU、参加国、そして民間が協力してリソースを結集する官民パートナーシップである。ルクセンブルクに拠点を置く同事業体は、欧州全域に最先端のスーパーコンピューティングインフラを開発・配備するとともに、関連する研究開発やイノベーション活動を支援することを主な目的としている。既に世界トップクラスの性能を誇るスーパーコンピューターを複数導入しているほか、量子コンピューティングインフラの整備も進めている。
今回選定された他のアンテナ設置国は、ベルギー、キプロス、ハンガリー、アイルランド、ラトヴィア、マルタ、スロヴァキア、アイスランド、スイス、英国、そしてモルドヴァである。EuroHPC JUは、これらの取り組みを通じて、欧州におけるAIの研究とイノベーションをさらに推進していく構えを示している。
(アイキャッチ画像出典:EuroPC JU)
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