コソヴォ政府がセルビア製品に対する輸入規制を撤回:ドイツ・EUはコソヴォの決定を歓迎
10月7日、コソヴォ政府はセルビア製品に対する輸入規制を部分的に撤回し、メルダレ(Merdare)検問所を通じたセルビア製品のコソヴォへの輸入再開を認めると発表した。
コソヴォ政府は、「セルビアから武器・弾薬が密輸される可能性がある」との安全保障上の懸念を理由に、2023年6月より、セルビア製品のコソヴォへの輸入を全面的に禁止する措置を導入していた。しかし、この措置はセルビアに進出している外資系製造業の業績に大きな影響を与えており、EUやアメリカはコソヴォ政府に対してこの措置の見直しを求めていた。
特にセルビア及びコソヴォの双方にとって最大の貿易相手の一つであり、多数の自国企業がセルビアに進出しているドイツ政府は、輸入禁止の撤回を求めてコソヴォ側に対する圧力を強めており、今年9月には、ドイツ政府のサラジン(Manuel Sarrazin)西バルカン特使がインタビューの中で、「コソヴォは自由貿易を阻害する措置を撤回すべきであり、さもなければ、コソヴォ自身が西バルカンの自由貿易体制から排除され、孤立することになる」と述べ、コソヴォに対する警告を発していた。
今回のコソヴォ政府の輸入禁止撤回を受け、ローデ(Jörn Rohde)駐コソヴォ・ドイツ大使は、自身のXアカウントを通じて、「メルダレを通じたセルビア製品の輸入を認めるというコソヴォ政府の決定を歓迎する」とのコメントを表明した。
また、駐コソヴォEU事務所は、「メルダレを通じたセルビア製品の輸入再開を歓迎する。中欧自由貿易協定に則った西バルカンにおけるモノの自由移動は、西バルカン成長計画の一部でもある西バルカン地域共通市場を機能させるうえで重要である」との声明を、Xアカウントを通じて発出した。
現地報道等によれば、EU及びドイツはコソヴォに対し、セルビア製品の輸入再開を認めることと引き換えに、中欧自由貿易協定(CEFTA)の枠組において、コソヴォが国連を通さずに自身を代表することを認めるという条件を提示していたと伝えられている。CEFTAは現在、西バルカン6カ国のみが加盟国となっており、地域内での自由貿易体制の基盤となっている。CEFTAの枠組内におけるコソヴォの立場は、現在でも国連コソヴォ暫定統治ミッション(UNMIK)によって代表されており、コソヴォ政府はこの扱いを不満として、コソヴォ政府自身がコソヴォの立場を代表することを求めていたが、セルビアは、UNMIK設立の根拠となっている国連安保理決議1244号が有効である以上、CEFTAへのコソヴォの参加はUNMIKがコソヴォを代表する限りにおいて認められる、との立場を主張している。
セルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、コソヴォの決定を受け、「輸入再開はセルビア経済にとって重要な決定である」と述べつつ、「しかしコソヴォは、輸入再開から3日後にはありもしない難癖を付けてセルビア製品を輸送する車両を止め、4日目には検問所での往来を全面的に止め、5日後には彼ら自身が持ち込んだ弾薬を『密輸の証拠』としてでっち上げて国境を再び閉鎖してしまうだろう」と述べて、コソヴォ側の今後の対応を牽制する発言をしている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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