第10回ベルリン・プロセス首脳会合が開催される
10月14日、ベルリンにおいてベルリン・プロセス第10回首脳会合が開催され、議長国であるドイツのショルツ(Olaf Scholz)首相、西バルカン各国の首相に加え、欧州委員会のフォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)委員長、EU議長国であるハンガリーのオルバン(Orbán Vikto)首相等が出席した。
ベルリン・プロセスは、西バルカン諸国間の協力促進と西バルカンのEU加盟プロセスの加速化を目的に、2014年に当時のメルケル・ドイツ首相の主導で開始された枠組みであり、EUを中心とした欧米各国や国際金融機関もベルリン・プロセスを全面的に支援している。
今回の首脳会合は、ベルリン・プロセス開始から10周年という節目を記念するものとなった。
会合での声明において、フォン・デア・ライエン欧州委員長は、過去10年間のベルリン・プロセスの進展とその成果を振り返ったうえで、「過去10年間でEU拡大の重要性は高まり、特にロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢といった地政学的な変化を受けて、西バルカンへのEU拡大の重要性はかつて無いほどに高まっている。EU拡大に向けた第一の前提条件は民主主義や法の支配といったEUの中核となる価値の共有であり、第二に早期の経済的統合が必要となる。それゆえに、西バルカン共通地域市場創設を推進するベルリン・プロセスは重要である」と述べた。フォン・デア・ライエン委員長はまた、「共通地域市場と欧州統一市場を繋ぐことが求められており、そのためにEUは、昨年のベルリン・プロセス首脳会合において60億ユーロ規模の西バルカン成長計画を打ち出した。西バルカン成長計画とベルリン・プロセスは相互補完的な関係にあり、成長計画の下で西バルカン諸国は特定分野における欧州単一市場への部分的な参加が認められるが、そのためには、西バルカンは公平な競争条件(level playing field)の創出に向けた適切な改革アジェンダを採択する必要がある」と述べた。そのうえでフォン・デア・ライエン委員長は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナを除く西バルカン5カ国が改革アジェンダを採択する見込みであり、これを受けて年内にも成長計画に基づくEU資金の西バルカンへの提供が開始されるとの見通しを示し、これはベルリン・プロセスがもたらした成果であると強調した。
会合では、西バルカン6カ国の首相が「2025年から2028年の共通地域市場行動計画」を支持する宣言及び「高等教育へのアクセスおよび入学に関する協定」に署名した。
首脳会合の結論文書となる議長総括では、地政学的な不確実性やウクライナに対するロシアの侵略戦争に直面する中、ベルリン・プロセスが連結性、貿易、エネルギー、輸送、イノベーション、グリーン・トランスフォーメーション(GX)の分野における関係強化に果たす重要な役割が再確認された。
参加国は、西バルカン地域の経済成長と生活条件改善の鍵として、西バルカン成長計画の不可欠な要素である共通地域市場(CRM)を通じた地域協力の必要性を強調した。新たなCRM行動計画は、2025年から2028年においてEUの規則と基準に基づいて地域経済統合をさらに深化させるための重要な合意文書として歓迎された。また、中欧自由貿易協定(CEFTA)の機能回復も歓迎された。10月9日のCEFTA合同委員会で採択された11の新たな合意文書は、西バルカン地域市場の発展に貢献し、地域各国の市民に実質的な利益をもたらすものとされている。
また、西バルカンのEU統合プロセスのあり方とそれに対するベルリン・プロセスの果たすべき役割に関する市民社会からの提言も歓迎され、西バルカンにおける強固な民主主義の構築と繁栄における市民社会の役割の必要性が強調された。
西バルカン6カ国の首相は、善隣友好関係と地域協力を再確認する共同宣言に合意し、地域協力へのコミットメントを示すとともに、未解決の二国間問題に対処するうえで対話と建設的なアプローチが重要であることが認識された。
その他、青少年、科学と教育、連結性と輸送インフラ、エネルギー、気候政策とグリーンアジェンダ、食料と農業、社会政策、社会的包摂、ジェンダーと平等、移民と安全保障などの分野も議長総括で取り上げられた。
最後に、参加者は包括的な地域協力の可能性を最大限に活用するため、ベルリン・プロセスの継続を望む意向を表明した。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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