
米国、クロアチア企業ヤナフによるセルビアNISへの原油供給を10月15日まで許可
10月8日、クロアチア国営の石油パイプライン運営会社ヤナフ(Janaf d.d.)は、米国財務省外国資産管理局(U.S. Office of Foreign Assets Control, OFAC)から、ロシア資本傘下のセルビア石油公社(Naftna Industrija Srbije, NIS)への原油供給を10月15日まで継続するための新たなライセンスを付与されたと発表した。
ヤナフ社のプレスリリースによれば、今回の許可は、ヤナフが2024年1月1日から2026年12月31日までの期間にNISへ1000万トンの原油を輸送する契約を履行し続けるための一時的な措置とされている。
米国は今年1月、NISのロシア資本を理由に対ロシア制裁の対象としたが、その完全な施行はこれまで8回にわたり延期されてきた。ヤナフはこれに伴い、供給継続のためのライセンスを繰り返し取得している。
ヤナフは声明で、クロアチア政府および米国の法律顧問と協力し、適用される規制の枠組みに沿った解決策を引き続き模索していくとしている。一方で、NIS自身が供給を受け続けるために必要なライセンスを取得したかどうかについては、公式な情報を得ていないと付け加えた。NISは10月3日に新たな特別ライセンスをOFACに申請していた。
輸入原油の全量をヤナフのパイプラインに依存しているNISにとって、制裁が完全に施行されれば、同社唯一のパンチェヴォ製油所(年間処理能力480万トン)の操業に深刻な影響が及ぶ。
NISの株主構成は、ロシアのガスプロム・ネフチ(Gazprom Neft)が44.85%、セルビア政府が29.87%、ガスプロムの実質的傘下にあるインテリジェンス社(Intelligence)が11.3%となっている。以前はガスプロム・ネフチとガスプロム(Gazprom)を合わせたロシア側の持ち株比率が過半数を占めていたが、制裁発表後に株式譲渡が行われ、現在の構成となった。
セルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は10月5日のテレビインタビューで、制裁のさらなる延期の可能性はないとの見方を示していた。
ヴチッチ大統領はまた、ロシア側が制裁回避のために、インテリジェンス社が保有する株式の米国企業への売却及び米国産原油のNISによる購入という案を米国側に提案したことを認めている。
NISはセルビア国内の自動車燃料市場で66%のシェアを占め、ベオグラード空港とニシュ空港で運航する全ての航空会社に燃料を供給するなど、同国のエネルギー安全保障において極めて重要な役割を担っている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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