
セルビア、ノヴィ・サド – スボティツァ間高速鉄道を開通-「一帯一路」基幹プロジェクトのセルビア側区間が完成
10月3日、セルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、ノヴィ・サド(Novi Sad) – スボティツァ(Subotica)間高速鉄道の開通式典に出席し、最初の列車に試乗した。この区間の開通により、2022年3月に開業済のベオグラード – ノヴィ・サド間区間と接続され、首都ベオグラードからハンガリーとの国境の都市スボティツァまでが高速鉄道で結ばれた。
これは、ベオグラードとハンガリーの首都ブダペスト(Budapest)を結ぶ国際高速鉄道整備プロジェクトのセルビア国内区間の完成を意味する。
セルビア大統領府プレスリリースによれば、式典でヴチッチ大統領は、「この鉄道は経済発展に大きく貢献する。ブダペストを経由してヨーロッパ全体と繋がることができる」と述べ、プロジェクトの成功を誇るとともに、建設を担った中国企業とセルビア国民への感謝を表明した。また、スボティツァがセルビア人とハンガリー人が共に暮らす都市であることに触れ、「我々が兄弟のように、友好関係の中で共に建設した。ハンガリーの友人たちとの平和、安定、兄弟関係を維持してほしい」と語った。
ノヴィ・サド – スボティツァ間(108km)の貨物輸送は10月3日夜から開始され、旅客向けの商業運行は10月8日の正午から開始される予定である。開通から10月5日までは市民が無料で乗車でき、その後のベオグラード – スボティツァ間の往復運賃は2,000ディナール(約2,600円)に設定される。
このプロジェクトは、中国政府が推進する「一体一路」構想において、欧州での中核事業の一つと見なされており、中国鉄路国際(China Railway International Co.)と中国交通建設(China Communications Construction Company)のコンソーシアム(CRIC-CCCC)が建設を請け負い、資金の大部分は中国輸出入銀行の融資によって賄われた。
しかし、完成までにはいくつかの課題があった。当初の計画より開通は遅れており、その一因として、2024年11月1日にノヴィ・サド中央駅でコンクリート製の屋根が崩落し16人が死亡する惨事が発生したことが挙げられる。この事故の影響で、現在もノヴィ・サド中央駅は安全上の懸念から閉鎖されており、列車は近隣のペトロヴァラディン(Petrovaradin)駅を発着する。
さらに、このプロジェクトを巡っては汚職疑惑も浮上している。2025年8月には、元建設・運輸・インフラ相らが、中国企業に不当な利益を与え国家予算に損害を与えた疑いで組織犯罪担当検察庁に逮捕されており、捜査は現在も継続中である。
ハンガリー側のブダペスト – スボティツァ間の工事も進んでおり、ヴチッチ大統領によれば、全線開通は2026年2月末から3月初めになる見通しである。全線が開通すれば、ベオグラードとブダペスト間の所要時間は現在の約8時間から3時間未満へと大幅に短縮され、欧州交通回廊におけるセルビアの戦略的重要性が一層高まることが期待される。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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