
TOYO TIREがセルビアに欧州R&Dセンターを新設-ドイツから機能を移管し2027年稼働へ
10月2日、TOYO TIRE株式会社は、セルビア北部のヴォイヴォディナ自治州インジヤ(Inđija)市に所在する同社工場敷地内に新たな研究開発(R&D)施設を建設し、2027年1月より稼働させることを発表した。現在ドイツに所在する欧州R&D機能を2026年中にこの「セルビアR&Dセンター」へ移管し、欧州における開発体制を一層強化する。
TOYO TIRE社プレスリリースによれば、今回のセルビアへのR&Dセンター新設は、中核となる日本のタイヤ技術センター、米国の北米R&Dセンターと並ぶ、グローバル三極R&D体制の連携を強化する取り組みの一環であるとされる。同社は、燃費や電費効率、安全性、耐久性といった現代のモビリティに求められる多様なニーズに対応するため、相反する性能を両立させる技術開発を推進している。
新設されるセルビアR&Dセンターでは、特に「加工技術」の強化を重点テーマと位置づけ、新配合・新素材の開発や混合技術の高度化を通じて、製品性能と生産性の向上を図る。また、工場敷地内に併設されたテストコースを即座に活用できる利点を生かし、実車試験の頻度を高め、開発サイクルの短縮と新商品の迅速な市場投入を目指す。
このプロジェクトへの投資額は建設コストなどを含め約50億円に上る。新R&Dセンターの建屋面積は約4,600平方メートルで、約20人の従業員が勤務する予定である。特筆すべきは、従業員の半数をセルビアの大学などから採用する計画であり、現地の高度人材の雇用創出にも貢献することが期待される。
同社のグローバル戦略において、欧州のR&D機能は原材料や加工といった川上部分を担い、北米の拠点がマーケティングなどの川下部分を、そして日本が中核技術を担うという役割分担がより明確化されることになる。同日、記者会見した清水隆史社長は、自社の技術体系の統一名称を「シンク(THiiiNK)」と命名したことを発表し、「シンクを掲げて技術をさらに進化させ、主力の北米のみならずアジアや欧州でも我々が先導していきたい」と述べ、グローバル市場での競争力強化に向けた意欲を示した。
TOYO TIREは昨年、欧州販売統括機能をセルビアに集約させており、またR&D機能の一部の既にセルビアに移管している。今回のR&Dセンターの完全移管により、同社は欧州における生産・販売・研究開発の全機能をセルビアに集約させることになる。
今回の決定は、外国からの直接投資を積極的に誘致するセルビアにとって、単なる生産拠点から高付加価値な研究開発拠点へと自国の位置づけを進化させる上での重要な一歩となる。
(アイキャッチ画像はTOYO TIREインジヤ工場、出典:Shutterstock)
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