コソヴォ

コソヴォ関連ニュース

コソヴォ政府がミトロヴィツァの南北を繋ぐ新橋を開通-セルビアは強く反発

8月26日、コソヴォ政府は、民族的に分断されたコソヴォ北部のミトロヴィツァ(Mitrovica)市において、アルバニア系住民が多数を占める南部とセルビア系住民が多数を占める北部を結ぶ新たな車両用の橋を開通させたと発表した。この動きに対し、セルビア政府は「平和を損なう挑発的行為」であると強く反発しており、両国間の緊張が再び高まっている。

コソヴォのクルティ(Albin Kurti)首相代行は26日、自身のFacebookアカウントへの投稿で「イバル(Ibar)川に架かる36番目の橋の建設に2ヶ月もかからなかった。本日午前9時から車両の通行が可能になる」と発表した。ミトロヴィツァ市はイバル川を挟んで南北に分断されており、これまで市の中心部にある主要な橋は安全上の理由から長年、車両の通行が規制されてきた。

この一方的な開通に対し、セルビア政府でコソボ問題を担当するペトコヴィッチ(Petar Petković)政府コソヴォ・メトヒヤ事務所長官は、「対話の合意を踏みにじるものであり、仲介役である欧州連合(EU)への平手打ちに等しい」と激しく非難した。セルビア側は、新たな橋の開通がセルビア系住民が多数を占める北部へのアルバニア系住民の流入を促し、地域の安全保障を脅かすものだと強く懸念している。現地のセルビア系住民も建設に反対しており、7月にはコソヴォにおけるセルビア系最大政党のセルビア人リスト(Srpska Lista, SL)が中心となり、建設中止を求める署名活動を行っていた。

EUはこれまで、関係者間の合意に基づかない一方的な行動を控えるようコソヴォ側に要請してきた経緯がある。コソヴォ警察北部分署のエルシャニ(Veton Elshani)副署長は、「これは単に車両と人々の移動のための橋だ」と述べ、市民に憎悪を煽ることなく冷静に対応するよう呼びかけている。

今回の新橋開通は、インフラ整備という実務的な側面以上に、コソボとセルビア間の対立の根深さを改めて浮き彫りにした。EUが仲介する両国関係正常化交渉が停滞する中、現地での一方的な動きが更なる不安定化を招くことが懸念されている。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。