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スルプスカ共和国大統領が独立問う住民投票実施を示唆-大統領は辞任を拒否、RS首相は辞任

8月19日、ボスニア・ヘルツェゴビナの構成体であるスルプスカ共和国(Republika Srpska、RS)のドディック(Milorad Dodik)大統領は、自身の辞任を拒否するとともに、将来的な独立の可能性を示唆する住民投票の実施を表明した。同日、スルプスカ共和国首相も辞任を表明しており、同国の政治的緊張が一段と高まっている。

ドディック大統領は同日の記者会見で、9月末に住民投票を実施する意向を明らかにした。この住民投票では、「外国人とイスラム教徒がデイトン合意を破り、スルプスカ共和国を攻撃していることを受け入れるか」という問いが掲げられるという。さらに、この住民投票の結果が妥当な期間内に承認されない場合、90日以内にスルプスカ共和国の独立の是非を問う住民投票を実施する考えを示した。

この動きの背景には、ドディック大統領がボスニア・ヘルツェゴヴィナの上級代表(国際社会を代表し、デイトン和平合意の履行を監督する役職)の決定に従わなかった罪に問われ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ控訴裁判所において禁錮1年と6年間の政治活動禁止の有罪判決が確定したことがある。これを受け、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ中央選挙管理委員会は同大統領の職を剥奪する決定を下したが、ドディック大統領はこれを不服としていた。

ドディック大統領は、「現時点で、ボスニア・ヘルツェゴヴィナは我々にとって存在しない国だ」とし、「我々は占領下にあると考えている。占領者はイスラム教徒だ」と述べ、対決姿勢を鮮明にした。

また、同日にはスルプスカ共和国のヴィシュコヴィッチ(Radovan Višković)首相が辞任を表明した。RS政府プレスリリースによれば、ヴィシュコヴィッチ首相は、より広範なコンセンサスに基づく新たな連立政権が必要であると述べ、この動きがドディック大統領と合意した上でのものであることを明らかにした。ドディック大統領によると、約7年間首相を務めたヴィシュコヴィッチ氏は、スルプスカ共和国が所有する高速道路公社(Autoputevi RS)のCEOに就任する予定だとされている。

ボスニア・ヘルツェゴヴィナは、1990年代の紛争を終結させたデイトン合意に基づき、セルビア人主体のRSと、ボシュニャク(イスラム教徒)系およびクロアチア人主体のボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦という、強い自治権を持つ2つの構成体(政体)から成る複雑な国家構造を持っている。今回の事態は、この国の脆弱な統治体制を揺るがす深刻な政治危機へと発展するとももに、セルビアやクロアチアといった隣国を巻き込んた地域情勢の不安定化に繋がる可能性が懸念されている。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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